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メール送信のIPレピュテーションとは何か

はじめに

こんにちは、株式会社WOW WORLD(旧 エイジア)の藤田です。WEBCAS(https://webcas.azia.jp/)というメール配信システムを中心としたCRM周りのサービスを提供している会社で、メール送信のお仕事をしています。

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20年位前にこの仕事に関わってから度々「あのメールってもうすぐなくなるんでしょ?」と言われ続け、だいたい「うーん、メールだけがコミュニケーション手段なんてことはもうないだろうけど、メールだけがなくなるってこともないだろうし(面倒なので以下略)」と苦笑いしながら答えています。最近この手の質問は減りました。

そんなインターネット上のメールですが、一定量以上のメールを送るときにはIPアドレスのレピュテーション=IPレピュテーションというものに注意を払う必要があります。この概念はメール送信において特有のものなので、お客様からも質問をいただくことが多いです。このメール送信のIPレピュテーションについて何回かに分けて書いてみようと思います。メール送信についてIPレピュテーションの重要性を解かれる情報は多いのですが、そもそもこの概念の説明があまりインターネットにない気がしました。というわけでこの1回目は「メール送信のIPレピュテーションとは何か?」です。

IPレピュテーションとは?

このレピュテーションというワードを日本語に置き換えると「評価、評判」です。誰の何に対する評価かというと「メールを受け取る側」の「メールを送ってきたIPアドレスについての」評価です。

いきなり話が飛躍したかもですね。通常、手元に届くメールは、こういうフローで届きます。

①メールを作るアプリケーション(MUA)

②メールを送るサーバー(MTA)
↓ (インターネット)
③宛先ドメイン別のメールを受け取るサーバー(MTA)

④メールを受信するアプリケーション(MUA)

例えば、GmailからYahoo!メールにメールを送ったら、②はGmailで③はYahoo!メール

このようにインターネットを挟んでSMTPというプロトコルを使い、メールを送るサーバー(②)は宛先のドメインを受け持つサーバー(③)へメールを送ります。このときメールを受け取る側はメールを送ってきたIPアドレスについて、今までの評価から受け取るかどうかを決め、受け取ったメールの内容などから評価を更新します。

メールを受け取る側(Gmail、Yahoo!メール、docomo、au、softbank などなど)は、各々で評価軸も違えば、あるメール送信IPアドレスに対する評価点=レピュテーションも異なります(ある受信先Aではいい評価なのに、別の受信先Bでは悪い評価、のような)。

このような「メールを受け取る側」の評価を、(世界的に)積み重ねていったものが「メールを送ってきたIPアドレスに対する評判」=「メール送信のIPレピュテーション」です。評価と評判の関係は「ある人の評判はその人の周りの評価を積み重ねたもの」ということと同じ関係です。

そして人間関係と同様にというかそれ以上に、メールを送る側にとって大事なIPアドレスの評価を、メールを受け取る側が明確に教えてくれることはありません。けれど、送った側はメールを受け取るサーバーの反応から、IPアドレスの評価を推測することはでき、そこから必要な対応をとることができます。

これから書いていくように、この「IPレピュテーション」はメールを送信する上で重要な事項なのですが、その大事なことが明確に分かることがない、暗中模索するような対応を取る必要がある、というのはインターネット上の様々な通信の中でメール送信を特徴づけるものです。

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なぜこのようなものがあるのか?

これは迷惑メールやフィッシングメールに代表される「受信者が求めていないメール (unsolicited bulk email、いわゆるスパム)」から、受信者を保護するために発達した仕組みです。

もし、メールを受け取るサーバーが「IPレピュテーション」を気にせずメールを受け取ると、受信者のメールが迷惑メールで溢れかえる、または、受信者にメールを渡すまでにメールの内容によって迷惑メールだらけのメールから"迷惑でない"メールだけを選別する、といった不都合が生じます。

そのため、メールを受け取るサーバーはメールを送ってきた側のIPアドレスというインターネットを介した通信であれば必ず分かる項目を使って、

・送信元のIPアドレスは192.0.2.1 ⇒ これは○○というSNSの通知を送ってくる評価AなIPアドレス ⇒ このIPアドレスからはメールを受けとる
・送信元のIPアドレスは192.0.2.2 ⇒ これは○○というISPの契約者が使用するメールサーバーでときおりスパムが混ざる評価BなIPアドレス ⇒ このIPアドレスからはメールを受けとるけど、短時間にたくさんメール来たら受け取りを一時的に拒否する
・送信元のIPアドレスは192.0.2.3 ⇒ これはいつも迷惑メールを送ってくるメールサーバーなので評価CなIPアドレス ⇒ このIPアドレスからはメールを受けとらない

といったように評価を作成・使用して、受信者が求めたメールだけ届くようにする処理の最初のステップに使用しています。(その次にはメール内容によっての評価がある。)

IPレピュテーションが低いと起きること

メール送信のIPレピュテーションが低いと何が起きるかというと、「送信したはずのメールが宛先に届かない」「送信したメールが宛先に届いたけれど、いつも迷惑メールとして振り分けられてしまう」ということが起きます。(この説明は簡潔)

迷惑メールを送ってないならIPレピュテーションを気にする必要ある?

答えは「必要ある」です。なぜかというと、

①メールを送る側が新たなサーバー・ネットワークからメールを送ったとき、受け取る側から見ると、そのメールを送ってきたIPアドレスはいままでメールを送って来なかった評価のないIPアドレスであるため、受け取る側は警戒しメールを受け取り難い傾向がある

②受け取る側から見たとき「これがスパムである」と一律に定義できる指標はない。このため例えば、メールを送る許諾(オプトイン)を正当に取得し送信していても、一定時間に○○回「迷惑メールである」ボタン(下の画像のような)を押されたなど、「求められてない」メールを送っているのではないか?と判断してIPアドレスの評価を作成し使用する。

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ということから「受信者が求めていないメール (unsolicited bulk email、いわゆるスパム)」は送っていないメールを送る側であってもIPレピュテーションに注意を払う必要があります。

次回は、この「メール送信のIPレピュテーションはどのように決まるか?(=届けるにはどうすればいいか)」、次々回はメールを送る側で「メール送信でのIPレピュテーションをどのように計測するか」を書いてみたいと思います。

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