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エッセイ 涙

 由紀さおりの『故郷』(ふるさと)という歌(唱歌ではない)に、「あすは汚れた涙 流して生きてく私たちだけど」という歌詞があります。(作詞:山川啓介)「汚れた涙」とはどんな涙なんでしょう。涙にはいろんな涙があります。「悲しみの涙」、「悔し涙」、「嬉し涙」、「感動の涙」・・・。この歌の「汚れた涙」とは、「失恋の涙」、「出世競争に負けた涙」といったところかと解釈しています。
 私もきのう、テレビ(録画)を見ていて少し涙ぐみました。往年の大歌手、渡辺はま子の名曲『あゝモンテンルパの夜は更けて』を巡る逸話なんですが、私はずっと以前から知っていました。その歌が、フィリピンで戦犯として拘束されている元日本兵108名の望郷の念を歌った歌であり(作詞、作曲も元日本兵)、それを是非にと頼まれ、渡辺はま子が歌い、それをきっかけとして、渡辺はま子は国交のまだなかったフィリピンに渡り、元日本兵の前でその歌を歌って励まし、さらに、フィリピン大統領にその曲のオルゴールを贈り、それに大統領が心動かされて元日本兵に特赦を与えることになり、全員が無事帰国することができた、という話。知ってはいても、渡辺はま子の、歌で人を励ましたいという気持ち、そして行動力。さらに、歌の持つ力に感激させられて、ついつい涙を誘われてしまうのです。
 パリ五輪が始まって,悲喜こもごものドラマが展開されていますが、勝って流す涙は「嬉し涙」でしょうか。敗れて流す涙は「悔し涙」でしょうか。単純にそうとは言い切れないものもあると思います。今までの、グッと歯を噛みしめて来た思いから、解放されたほっとした思いから涙があふれ出るということもあるでしょう。経験のない私には、想像もできない複雑な思いがあると思います。
 いろいろな涙がありますが、私は個人的には、「感謝の涙」が一番美しい涙だと思っています。「ありがとうございました」と感謝して頭を垂れる人の頬から零れ落ちる涙に勝る涙はないと思っています。(両親が死んだ時も、会社を定年退職した時も泣かなかったのは、私に感謝の気持ちが足りなかったからでしょう。(笑))「汚れた涙」は汚れた涙で、カタルシス効果をもたらすものでしょう。若い人は、これからの長い人生でいろいろな涙を流すでしょうが、「感謝の涙」をたくさん流してもらいたいものだと思っています。(個人的意見です)

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