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エッセイ 絶景と名勝の違い(改題)

 最近「絶景」という言葉をよく目にする。「いい景色」というより、「すごい景色」「想像を絶する景色」あるいは「空前絶後の景色」というような意味であろうかと勝手に解釈している。それに対して、こちらは昔から使われてきた言葉だが、「名勝」とか「景勝」と言った言葉もある。こちらの方が、なんとなく落ち着いた感じがすると思うのは、私だけだろうか。
 景色に性格があるとすると(私お得意の「座標軸」をまたここでも持ち出して恐縮なのだが)山はA型、川とか海、水に関係したものはB型、平地はO型となる。(理由はここでは割愛させていただく)昔からの「名勝地」「景勝地」というのは、A、B、Oをそれぞれバランスよく含んだ風景のように、私は感じる。山があり、その下を川が流れ、人の住む平地がある。山は雪山だったり、夏山だったり、高い山だったり、小高い丘のような山でもいい。川が海に代わることもある。平地は田舎の田園地帯の場合もあれば、大都会の場合もあろう。とにかく3つの性格がほどよくバランスよくちりばめられているのである。それに対して「絶景」というものは、AならAのみ、BならBのみ、OならOのみの性格を極めて鋭角的に表している風景なように思われる。山なら山の、いかにも山らしい一面を表面に押し出したような風景、川なら川、海なら海、田園地帯、大都会の本質を鋭く表面に出したような風景を「絶景」と称する、と言ったら間違っているだろうか。私はそう感じるのだが。もし、私の言葉の解釈が間違っていたとしても、風景にその2種類があるという私の見解はあながち間違ってはいないと思う。私はそのどちらも好きである。
 これを人間に置き換えてみるとどうなるか。性格を強く押し出した人間集団と、それぞれ違う性格の人間がほどよくバランスを保っている集団とどちらがいいであろう。これは好みの問題かもしれない。優劣をつける問題ではないのかもしれない。それぞれ長短があると思うが、「穏やか」「癒される」「平和的」といった基準で選ぶと、後者の集団、風景では「名勝」「景勝」のほうが優れていそうな気がする。今の時代には少々インパクトが弱いのかもしれないが・・・。

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