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かじり読み読書感想文        日本戦没学生の手記『きけ わだつみのこえ』

 昭和31年生まれの私も、残りの人生の方が短い年になってしまった。死を意識し始めて、子どもも財産もない自分が、何を残せるかということを考えるようになった。何かを残さなくてはいけないのか、何も残したくないという人もいるだろう。しかし、私は何かを残したい。自分がこの世に生きた証となるものを。と考えた時に私には何か書き物を残したいという気持ちが強いことを改めて意識した。日記は子どものころから苦手で、書き続けた試しがない。それ以外のエッセイ、感想文、評論、詩、短歌、俳句・・・、理想は小説が書ければ一番いいと思う。そう考え始めてから何か思いつくことがあると、パソコンに文章を書き溜めてきた。こんなものを書いたところで何の役に立つ?誰が読むというのだ?そう思うこともあったが、書いたものを後日読み直してみると、案外良かったりして、うん、これなら残しておいてもいいなと、一人で悦に入ったりすることもある。
 そこでみなさんにお勧めしたい本がある。『きけわだつみのこえ』(岩波文庫)である。アジア太平洋戦争時に10代、20代の若さで死んでいった若者たちの手記を集めたものである。日記であったり、手紙、遺書であったりする。戦争がどうとか難しい理屈は抜きにして、読めば胸に迫るものがある。望む望まぬに拘わらず、死を運命付けられた若い命。そのギリギリの最後の姿がまざまざと目に浮かんでくる。その命に直に触れているかのような迫力がある。
 大変おこがましいが、私もこういうものを書き残したいものだと思う。半ば遺書のつもりで・・・。

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