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★エッセイ集 視座

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エッセイを集めました。
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#戦争

エッセイ 悲しき軍歌(改題)

 昭和31年生まれの私にとっての、最初の戦争の記憶といえば、傷痍軍人だろうか。熱田神宮にお参りに行った時など、駅前とか参道で、義足、義手に白装束で、義捐金を募っていた姿が目に焼き付いている。子ども心には、義手、義足が怖く感じたものだ。  言葉として、最初に戦争を感じたのは、軍歌であったと思う。その当時は戦争映画、戦争漫画がまだ人気があり、それらの主題歌、挿入歌として軍歌が使われたり、懐メロ(懐かしのメロディ)番組などで軍歌が歌われることも多かった。  軍歌などというと眉をひそ

エッセイ 戦争への分岐点(降る雪や 昭和は遠く なりにけり)

11(いちいち)に 22(にに)を足せば 6となる 昭和の歴史 忘れじ と思う 1+1+2+2=6。この判じ物のような文章は一応短歌である。出て来た数字を並べると 11226   昭和11年2月26日の数字だけを並べたものである。昭和11年2月26日。2・26事件の起きた日である。私は時々2・26事件の起きた年がわからなくなる。それでこの短歌を作った。たまたま年月日が1+1+2+2=6になっていることに気づいたので、面白半分に作ってみたのである。  2・26事件は昭和史のタ

エッセイ 軍歌を歌う少女

 小学校6年の時である。今から55年も昔の話である。修学旅行で京都・奈良へ一泊のバス旅行へ行った帰りの車中でのことである。お定まりのバスの中での歌の時間になった。指名された人間がみんなの前で歌うのである。ある少女が指名された。その少女はボーイッシュなタイプの女の子で、自分のことを「ぼく」と言ったりしていた。 「ぼくは今はやりのグループサウンズはあまり好きではありません・・・」 (グループサウンズとは簡単に言えばバンドである。ビートルズの人気にあやかろうと芸能事務所が粗製乱造し

エッセイ 日本の悪魔         ~横溝正史と森村誠一~

 横溝正史の小説には「悪魔」の付いたタイトルが多い。「悪魔」とは大げさであるし、横溝正史の小説は多分に日本的な風土を背景にして殺人事件が起きることが多いのでそういう意味でも、西洋の概念である「悪魔」は不似合いの感は否めない。と思っていたら今度は森村誠一が『悪魔の飽食』と来た。アメリカのスプラッター映画のタイトルと勘違いしてしまいそうである。  ところでこの横溝正史と森村誠一。ともに角川書店が、ブームを作り上げて何千万部という文庫本を売り上げた二人だ。世代の違いはあれ、どこかで

エッセイ 関東大震災で燃え残った町

 NHKの番組で、関東大震災にまつわる話でとても興味深い話を知りました。感動的であり、皮肉であり、また、とても恐ろしい話です。  関東大震災で東京の下町は壊滅的被害を出し、10万人以上の人がなくなりました。その中でポツンと燃え残った町があったというのです。千代田区の神田佐久間町と神田和泉町です。二つの町は隣同士です。他の町の住民が、家財道具だけ持って逃げ出した(借家住まいが多かったから)のに対して、この2つの町の住人は逃げずに、協力して消火活動に努めたというのです。それには理