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エッセイ 日本の悪魔         ~横溝正史と森村誠一~

 横溝正史の小説には「悪魔」の付いたタイトルが多い。「悪魔」とは大げさであるし、横溝正史の小説は多分に日本的な風土を背景にして殺人事件が起きることが多いのでそういう意味でも、西洋の概念である「悪魔」は不似合いの感は否めない。と思っていたら今度は森村誠一が『悪魔の飽食』と来た。アメリカのスプラッター映画のタイトルと勘違いしてしまいそうである。
 ところでこの横溝正史と森村誠一。ともに角川書店が、ブームを作り上げて何千万部という文庫本を売り上げた二人だ。世代の違いはあれ、どこかで接点があったとしてもおかしくはない。
   (以下は私の単なる想像であって、事実ではありません。)

「森村さん、岡山でこんな話を耳にしたんだけどね・・・・。戦争中に岡山で毒ガスを作って、実験までしていたというんだよ。」
「毒ガスですか?ABC兵器の一つとして国際的に製造、使用が禁止されている・・・。」
「そうなんだ。大久野島で作って、蒜山高原で実験をしていたらしい。僕はそれを知った時に、大げさでなく、鳥肌がたったよ。日本人はなんて恐ろしいことを考えるんだろうってね。僕の考える殺人事件とは桁が違う。僕がね、小説のタイトルに「悪魔」ってつけるのはね、この戦争時における日本人の恐ろしさはまさに「悪魔」のようだということを密かにアピールしたかったからなんだよ。それがね、どうも毒ガスだけじゃなさそうなんだ。原爆も研究していたし、生物兵器も作ろうとしていたらしい。原爆は京都大学で、生物兵器は満州でやっていたらしい。」
「本当ですか?先生、僕にそれ、やらせてもらえませんか。悪魔の所業を暴いてやります。」
「是非やってみてください。森村さん。」
といってできたのが『悪魔の飽食』。アイデアをもらった横溝正史に敬意を払って「悪魔」とつけた。

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