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心理学から学ぶ「眠ること」の大切さ

「マイヤーズ心理学」はとても面白い心理学の教科書で、初学者にとっても理解しやすいように綺麗に構造化されており、記述も学説を踏まえながら分かりやすく書かれていて、図版などのビジュアルも豊富なので、読んでいて楽しくなります。

この本で、睡眠の持つ役割について、研究結果が多く引用されながらうまく説明されているのでまとめてみました。以下の引用はすべて「マイヤーズ心理学」からです(引用内強調はすべて筆者)。

まずは、「睡眠負債」について。

5時間睡眠の夜が続くと、睡眠の借金がかさんでいく。全額返済は不要でも、一度の長い眠りでは完済できないほどの借金だ。「脳は少なくとも2週間分の睡眠負債を正確に把握している」と睡眠研究者ウィリアム・デメントは報告した(Dement, 1999, p.64)。

睡眠不足が「借金」として溜まっていく感覚はたしかにありますよね。そうなってくると週末に少し多めに寝るだけでは解消せずに、次の週に疲れを引きずることになりがちです。。

ギャラップ世論調査では、必要な睡眠がとれていると答えた成人の63%は生活に「非常に満足している」と答えた(もっと睡眠が必要だという成人では、36%しかこのように答えなかった)(Mason, 2005)。

そして、睡眠が十分にとれていることは、人生の幸福に影響することもこの調査は示唆しています。これは個人的にも感じているところで、育児や仕事で忙しくなり睡眠不足が続くと、毎日の生活がとたんに苦しくなります。寝たいのに寝れない、というのは大きなストレスですよね。

はたらく女性909人から日常の気分について回答を得たところ、気分にとって重要なこととそうでないこと(例えばお金は、よほど貧乏でない限り重要でなかった)に関して、ずいぶん意外な答えとなった。仕事の時間的プレッシャーが少ないこと、夜ぐっすり眠れることが重要な要因として挙がったのだ(Kahneman et al., 2004)。

それはこの別の調査の結果からも示唆されていて、睡眠と気分の良し悪しには関係があると言えそうです。

睡眠不足は抑うつの予測因子だ。12~18歳の子どもや若者一万五千五百人を調べた研究では、睡眠時間5時間以下の子は、8時間以上の子と比べて抑うつのリスクが71%も高かった(Gangwisch et al., 2010)。

そして、怖いのがこの研究で、睡眠不足がうつのリスクを高めることが示唆されています。これは私にも身の覚えがあります。私は千葉県の郊外の家から港区の私立中学・高校に通っていたのですが、片道1時間40分と非常に遠く、毎朝5時半に起きて学校に通っていました。ということで、夜寝る時間が遅くなりがちな高校時代は12時以降に寝ることも多く、毎日の睡眠時間は5時間を切っていました。これは、いま思うと自分の抑うつ傾向を間違いなく高めていた気がします。睡眠不足は本当に恐ろしいですね、、、

親に強制された就寝時間を守る子どもは、後年のうつ病発症率が低いという関係があるし、学校の始業時刻を遅らせることで、青年期において睡眠時間が増え、日中の注意力と気分が向上する(Gregory et al., 2009; Owens et al., 2010)。

この研究がまさに私が10代に意識すべきだったことを指摘しています。。いまさら感はあるのですが、高校時代にもう少し睡眠時間を取っておくことで、その後の苦労を避けられたのではと思ってしまいますね。この睡眠時間と抑うつの関係は社会全体でもう少し知られる必要があるのではと思います。

また、この記事のように、学校の始業時間を遅らせたほうがいいのでは、という話はよく見るようになってきました。

そして、睡眠不足は肥満にも影響してきます。たしかに睡眠不足が続くと、私の場合も、お菓子をバカ食いする傾向があるように思います。

睡眠不足だと空腹感を増強するホルモンであるグレリンが増え、空腹感を抑制するホルモンのレプチンが減る。身体に刺激を与えて脂肪を作らせるストレスホルモンであるコルチゾールも増える。案の定、通常より睡眠時間が短い子どもや成人は、通常より長い人よりも太っている(Chen et al., 2008 ; Knutson et al., 2007 ; Schoenborn & Aam, 2008)。

さらに、睡眠不足は免疫細胞の活動にも影響してきます。たしかに、「きちんと睡眠を取ること」は新型コロナウイルス対策でもよく語られていますよね。

睡眠不足だとウイルス感染やがんと闘う免疫細胞が抑制されうる(Motivala & Irwin, 2007)。一例では、実験参加者に風邪ウイルスを与えたところ、睡眠が平均7時間未満の人は8時間以上の人より3倍も風邪にかかりやすかったという(Cohen et al., 2009)。病気から身を守る睡眠の効果のせいか、7~8時間寝る人は、慢性的な睡眠不足の人よりも長生きする傾向にあり、高齢者でも寝つきが良い人あるいは寝続けられる人の方が、睡眠不足の高齢者より長生きする傾向にある(Dement, 1999 ; Dew et al., 2003)。

ということで、こうして睡眠がいかに重要かを学ぶと、娘たちを寝かしつけたあとに、つい夜遅くまでお菓子を食べながらNetflixやマンガを楽しんでしまう生活を変えていかなくてはと改めて思いました。。。

★ボーナス・トラック★
前職で、仕事も充実して睡眠もよく取れて幸福度が高かったときのこと、その考察について書いています。

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