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自分の悩みを抽象化することの罠について

cakesの「こころを使いこなす技術」の連載でも強調していますが、悩みをうまく処理する上で大切なのは、自分が本当は何を辛いと思っているかの解像度を上げて、それを客観的に捉えることです。でも、これって案外難しいです。

私がカウンセリングを受けながら気づいたことは「抽象化の罠」です。例えば、上司が苦手だなと感じている時に、本当は「喋り方や目つきが怖い」から苦手なのに、「上司とは方向性が合わない」みたいに抽象化された、カッコつけた理由づけをしてしまうことがあります。

これは厄介で、自分の感情を抽象化してしまうことで、辛いとか嫌だと思っている生の感情をうまく捉えきれず、そのストレスの深さを自分で見誤ってしまうんですね。結果として、自分が思っている以上にストレスを溜め込んでしまうことになります。

そして、カウンセラーさんによると、男性はこの「抽象化の罠」にはまりやすい傾向があるそうです。おそらく「男は細かいことに悩むのはカッコ悪い」といった社会規範が、男性は内面化されがちなことが大きいのかなと。なので、「上司の目つきが怖い」とは言えずに「方向性が合わないんだよね」みたいにまとめがちです。昔の私もまさにそうでした。

さらに、こうした「抽象化の罠」は、(男女限らず)マネジメントにおいても課題になりがちです。例えば部下とうまくいっていない時に、本当は若手の部下の白けた表情が怖いのに、「最近の若い人に対するマネジメントの難易度上がってるな」みたいに抽象度上げて考えてしまう。この自分の本音との乖離が段々とストレスを高めていくし、対応策も少しずつズレが生じていきます。

また、最近のビジネスでは、管理職に「メンター」的役割を求める傾向が強まってきているため、部下の心理面も含めて面倒見なくてはいけない、というプレッシャーは高まっています。

ただ、管理職は当然ながら心理学やカウンセリングの専門家ではありませんから、これはなかなかタフな状況です。上記の例のように、部下との(心理要素も含んだ)関係性に悩んでも、それをうまく解決するノウハウを持っていないし、そこでの戸惑いや不安といった自分の感情を適切に捉えることにも慣れていません。それがゆえに、段々と自信を失っていき、仕事の質にも影響が及んでしまっているマネージャーが実は多いです。

「抽象化」というのは大切なスキルですし、ビジネスにおいてはそれが武器になることも多いのですが、こと自分(もしくは他人)の心理については、できる限り具体的に、そこで本当に自分が感じている思いに目を向けることが大切と考えています。

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★ボーナス・トラック★
過去のプレイヤーとしての実績に誇りを持つマネージャーがはまりがちな「べき論」の罠について書いています

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