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藤森建築

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縁あって、藤森照信さん「設計」の建築に携わることになった。
藤森さんの場合「設計」というのはちょっと違うかもしれない。どちらかというと「監修」と言ったほうがしっくりくる。
何度も直接お会いして打ち合わせを進める中で、藤森さんの仕事への関わり方は、設計士というよりも監修・総監督だと感じている。
一つの映画や舞台、或いは書籍や雑誌、(実際は建築物なのだが)そうした作品(形)を作り上げるプロデュースをしてくれている感覚。

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ご存知の方も多いと思うが、藤森照信さんは、茅野市出身の偉大な建築史家であり建築家。
私もかつて茅野市民だったが、茅野の図書館に行くと藤森さんに関する書籍がかなりのスペースを占めていて、さすが茅野市出身の著名人と感心したものだ。

藤森さんの代表作としては、神長官守谷資料館に始まり、タンポポハウス、ニラハウス、茅野の実家の土地に建てた高過庵、低過庵、更に多治見モザイクタイルミュージアム、ラコリーナ近江八幡など多数あり、最近では、海外で茶室を作る機会も増えているそうだ。

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藤森さんとお会いする回数も増え、打ち合わせを重ねるにつれ、ある疑問と言うか、簡単には理解できない藤森さんの建築へのこだわりや思い(関わり方)と言うものが、どんどん私の中で膨らんでいった。
実際に、せっかく取り付けた柱を交換することもあったし、古色に塗装した木材を全て電気カンナで削ることもした。
極めつけは、加工が終わった棟木が不要になったこと。そんなこともあります。
ただそれは、こちらが藤森さんの思想に近づいていなかったのが原因なのだと理解している。

そんなある日、嫁さんの親父さんから1冊の本が届いた。

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藤森さんと直接会って打ち合わせをした時に言われた言葉が、そこには文字で書いてあった。
藤森さんの建築に対する思いの詰まった一冊。
と言ってもその本を読んだだけで、まだ藤森さんの思いの10分の1も理解出来ていないと思う。
実際100%理解できる人は地球上に藤森さんしかいないのだが、多くのクライアントが藤森さんに建物の監修を依頼し、結果としての建物がそこに存在して多くの人を惹きつけている現実を目の当たりにすると、施工する側としては、少しでもその思想を理解したい、理想に近付きたいと思うのが人情というもの。
この本に書かれている藤森さんの建物に対する思想は、私の想像はるかに超え、一度読んだだけではとても理解できない。
最低もう5回は繰り返し読まなければならない本である。

建築物がその建物本体のみならず周辺の環境や、またそこに集まる人たちにも大きな影響を及ぼすことを、藤森建築から改めて教えていただいた。常々、職人にゴールはない、人生にゴールはない、日々勉強、日々成長と思っているが、まさにそのことを体験させてもらった仕事との出会い、藤森さんとの出会いだった。
私の中での藤森建築、現在進行中。


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