起業家チキンレース
起業家を長くやっていると、大きなチャンスもあれば、大きなピンチも訪れる。
起業したての頃なんかは、月に500万円投じて自社ECサイトのユーザーを増やす広告(主にFacebookとGoogle)を毎日夜中まで分析して運用していた時もあった。割り算すれば、1日16万円ほど。毎日その金額が貯金から減っていく。そう、立ち上げ初期は当然ながら自己資金での投入なのだ。
胃をキリキリしながら、コンバージョンレートをチェックしていたものだ。その出費を抑えることができるかどうかを毎日考えていた。
月に1000万円程度の売り上げまで効率をあげて持って行った時、次に怖いのは、なんとその出費を減らすことなのだ。
「1日16万円の広告をもし減らして、明日の受注が減ったらどうしよう」
コストを抑えることは、実はさらに恐怖なのだ。せっかく作り上げた売り上げがなくなってしまう錯覚に陥るから。ユーザーがいなくなってしまうという恐怖に怯える。
私の場合、その広告を削る決断をするのに、1ヶ月かかった。
結果、その数ヶ月後には、5分の1まで広告を減らしても売り上げは維持できる運用まで辿り着いた。
月に500万や1000万の世界だと、起業家は自分でどうにかしようとする。だけど、月に5000万や1億円の資金が足りないなんて局面になった場合には、もう一人ではどうしようもない。そこは「資本」というものを考え始めるしかない。
スモールビジネスと、スタートアップ
PL経営とBS経営
美味しい唐揚げ屋さんと、プロテインを多く含み油の少ない製法を発明すること
私は美味しい唐揚げを作ることも好きだし、ランナーなので、プロテインを多く含み油の少ない唐揚げにも興味は大きい。
スモールビジネスと、スタートアップ
これは自己管理能力と、社会洞察能力とも言い換えることができる。
スモールビジネスであり、PL経営であり、美味しい唐揚げを作ることは、ぜんぶ自己管理能力だ。
コストと売り上げをどうコントロールするか。
美味しい唐揚げのレシピをどうコントロールするか。
毎朝起きて、お店を開くことを続けられるか。
スタートアップの場合は、社会を洞察できるかどうか。そして、社会は資本で成り立っている。資本を利用できるかどうか。資本家が興味を示すかどうか。それが社会で求められるものに変身していくかどうか。
そのチキンは、本当に飛び立つのか?
チキンが飛び立つまでの我慢比べ。
目の前に崖が迫っていようが、アクセルは離さない。
このチキンはただの鶏じゃない。そう信じて突っ走る。
500万円の資金ショートという崖が迫る。Bダッシュでなんとか乗り切れる。
次は5000万円の崖が迫る。資本家を味方につければ、その崖を飛び越えるアフターバーナーが背中に搭載される。
横を見れば同じようなチキンでレースを始めたやつがちらほら現れる。あるチキンはあっという間に上昇していったりすることもある。
あっちの崖は、発射台のように上に伸びているんじゃないのか。そう揶揄することもあるだろう。社会はどの道も同じでイバラだ。
5000万円の崖をクリアした後に、また1000万円の崖が現れる。起業したてのころからしたら、胃をキリキリしたあの崖の2倍の深さだ。にもかかわらず、自分のチキンを妄想してる起業家は、前回の崖の5分の1にしか感じない。
そうすると、どうなるか。
感覚は麻痺してくる。その(小さな)崖が迫ってくる。あと3ヶ月だ。十分大きな崖なはずだが、崖を崖とも思わない。
アクセルは緩めず、走り続ける。そう、まだ3ヶ月もある。90日後にはどうにかなっているだろう(どうにかできるだろう)。自分への妄想が、神経を麻痺させる。
鶏をモチーフにしたポケモン「アチャモ(左)」は、進化すれば、「ワカシャモ」になり、最後には30階建てのビルを飛び越えていける「バシャーモ(右)」へと進化していくらしい。
「俺のチキンは、そのうちユニコーンになるぜ」
現実はポケモンとは違う。だいたいのチキンは、ずっとチキンだ。そうそう簡単に進化したりはしない。でも、このチキンが飛び立つことを信じて、崖に向かって突っ走っていくしかない。
会社が大きくなっていくと、社員という仲間も増えていく。大きくなったチキンは翼が生えて飛び立てる気がしてくる。しかし、大きくなると体重が増える。当然維持費も大きくなる。
もうすぐ25日。給料日。起業家とそれ以外の人との違いはこの1日にある。
会社員、会社員社長、投資家。みな25日には給料がやってくる。起業家(オーナー)にとって、給料とは飛んでいくものだ。チキンは飛ばないが。毎月25日の崖を乗り越えることができるかどうか、月に1回自分のチキンが生き残れるかどうかが試される。そして、仲間がいなければ、一歩も進むことはできない。6ヶ月ずっと這いつくばって、売り上げがゼロでチキンは飛ばなくても、キャッシュは飛んでいく。仲間がいなければ、進化するチャンスもなくなってしまう。
「俺のチキンは、そのうちユニコーンになるぜ」
一緒にこのチキンを押してくれないか。
起業家はみんなチキンレースを走っている。
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