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戦術的にサッカーを観る練習〜初級〜

・はじめに

サッカーを戦術的に楽しむためには"論理的思考"で試合を観ること。

と言うと、なんだか堅苦しくて嫌なので言い方を変える。

サッカーを戦術的に楽しむには、"なんで"を考えること。

「物事には必ず理由がある」

僕の信念の1つ。サッカーに限らず、起こる事象には必ず何か理由がある。(と思っている)

サッカーを観ていても、目の前で起こるスーパーなプレーを「すごい!」と感情だけで楽しむのも良いけど、"なんで"それができたのか理由を考え始めるとサッカーはもっと面白い。

試合の勝ち負けだけじゃなく得点や失点、試合運びが上手くいっている(いっていない)、全てに必ず理由がある。

戦術を理解していくというのは、その理由、なぜ、なんでを追究していく事だと思う。

この記事ではその初級編として、僕が指導者になりたての頃にやっていた試合を観る練習法を1つ紹介する。

念の為言っておくと、これを読んだからって急に林陵平さんのような戦術眼が身につくわけではない。

そうなるために何をすればいいかわからない、という人へオススメの練習方法を提案するよっていう記事。

・ゴールシーンを分析する

何をするか先に言ってしまうと、ゴールシーン(決定機)を遡りながら分析して言語化していく。

チームがどんな戦術で戦っているか、なんていきなり試合の全体像を掴もうとしても難しい。

なのでDAZNやSPOTV等のハイライトを利用して、ゴールが生まれたシーンやゴールに繋がりそうだった決定機を分析してみるのをオススメする。

アーセナルvsリヴァプールのサカのゴールが分かりやすかったので、実際の手順でゴールが生まれた理由を1つずつ遡って分析していく。

このゴールはハヴァーツのシュートをアリソンが弾いて、最終的にそのこぼれ球をサカが押し込んだ。

まず考えるのは、なんでハヴァーツはシュートを打てたのか?

"中央のスペースにフリーで抜ける事ができたから"

じゃあ、なんで中央にスペースがあったのか?

"ウーデゴールがライン間(MFとDFの間)でフリーでボールを受けて、ファンダイクを釣り出したから"

なんでウーデゴールはライン間でフリーになれたのか?

"ビルドアップ時、サカとマルティネッリが高い位置をとって相手DFラインを下げていたから"

ひとまずここまで。さらに遡ればウーデゴールが高い位置で待ち続ける事ができた理由とかもわかるけど、一旦ここで整理する。

"なんで"を分析して集めた理由を繋げていくと、

「両WGが高い位置を取ることで相手が間延びして、ライン間でウーデゴールがフリーで受ける。そこでファンダイクを引っ張り出してスペースができたから、ハヴァーツがフリーで裏に抜ける事ができた。シュートは弾かれたがサカも高い位置にいたので、遅れる事なくセカンドボールに反応できた。」

と、こんな感じにゴールを言語化できる。

これを色んなゴールで反復していく。とにかく反復していく。筋トレと同じで、ここからはとにかく反復、そして継続。すると段々と慣れてくる。

最初は同じシーンを何回も繰り返し観ながら分析していた人でも、慣れてくるとリプレイを繰り返す回数が減っていき、いつかは試合中に1回流れるリプレイやリアルタイムで気づけるようになる。

なんなら、「ここチャンスになりそう」と展開を予測できるようにまでなってくるはず。(これはマジ)

さらには、例えばジンチェンコが直接ハヴァーツに出してファンダイクに阻止されたとしたら、「ウーデゴール使えばチャンスになりそうだったのに」なんて別の選択肢まで見えてくる。(マジで)

そのためにはとにかく継続。でも楽しみながらやってほしいから、色んなチームのゴールを観ながらやっていくといいと思う。

・コツはスペースを観る

次に分析する際の「コツ」について。

コツはスペースの変化を意識して観る事。

さっきのゴールの場合、ファンダイクが動いてできたスペースが分かりやすい。

ボールに対応するファンダイクの動きで、アーセナルにとってはチャンス、リヴァプールにとってはピンチになるスペースが生まれた。

僕はサッカーはスペースの奪い合いだと思っている。

ゴールを奪う(目指す)というのは当たり前として、そのためのスペースを作る(作らせない)、使う(使わせない)、そういうスポーツだと思う。

以前書いたこの記事も読んで参考にしてほしいのだけど、サッカーはボールが動けば必ず人が動く。

でも守るゴールの位置は変わらないから、守備側の立つべき位置(守るべき位置)というのはボールとゴールの位置を基準にして正解がほぼ決まっている。

つまり攻撃側からすれば、「ボールをここに動かせば、守備はここに動くだろう」という予測ができるし、「ボールがここに動いたから、守備はここに動いた」と結論付ける事もできる。

「展開を予測できるようになる」と書いたのはこういう意味。

「ボールがこう動けば、守備がこう動く、だからここにスペースができるだろう」と予測ができるようになる。

攻撃側は守備の動きを予測しながらスペースを作るようボールを動かしているし、守備側は危険なスペースを作らないよう協力して動いている。

なので紹介した手順でゴールを分析していく際は、どこにスペースがあるか、そのスペースはどうしてできたか、これを意識して観ると分析を進めやすくなる。

・さいごに

最後にここまで書いた内容を簡潔にまとめる。

サッカーを戦術的に観れるようになるためには、スペースを意識しながらゴールシーンを遡って分析する。

まずは試合の一部分を論理的に言語化してみよう。

これが僕もやっていたオススメの練習法。

ぜひ一度、実践してみてほしい。

ちなみにタイトルには初級と付けたけど、中級や上級を書く事はないと思う。笑

たぶんその必要がないから。

この記事のタイトルは「戦術的にサッカーを観る練習〜初級〜」だけど、実際に僕が書いたのは「サッカーを論理的に観る思考回路の作り方」だ。

僕が紹介した方法で試合の一部分(ゴールシーン)だけでも論理的に観るようになれば、それを続けてくれた人はたぶん分析する範囲を自分でどんどん広げていく。

ゴールシーンだけでなく中盤の攻防、ビルドアップ、ボールの奪い方、色んな事を論理的に分析しようとするんじゃないかな。

それで分析した内容を繋げていけば試合の全体像、つまりはチームの戦術が見えてくるはず。だからこの記事の続きはたぶん書く必要がない。

あとは機会があればどんどんアウトプットするといい。

同じシーンを分析しても感じ方は人それぞれだから、色んな人と意見を交換できるともっと視野が広がると思う。

そして最後に、この練習方法を試して「楽しくない」と思ったら無理に続ける必要もない。

こうするとサッカーはもっと楽しいとは言ったけど、そんな事考えずに観てもサッカーは楽しい。

サッカーの戦術を理解できないと恥ずかしいなんて事はないし、感情で思い切り楽しんでほしい。

サッカーの楽しみ方は自由だから。

この記事を読んでくれた人といつか戦術について話ができれば、僕がちょっぴり嬉しいだけ。

おしまい。

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