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HSPの彼女: 予定を立てる ~美容院編~ (2/2)

HSPにとって予定とは非常に厄介なもので、美容院ひとつ行くにしたって、その美容院を選ぶだけでも様々な苦悩がある。そしてその後も予定が終わるまで、当然ながら彼女の悩みの種は尽きないのである。

行くかどうか悩み美容院を決めたときと同じように、予約を入れる段階でも悩むことは多い。オンラインで予約ができる昨今、HSPにとって苦手な電話をせずに日程の調整ができるのはすごくありがたいのだが(電話が苦手なことについては、また今度詳しく書こうと思う)、ゆっくり物事を検討する時間があるだけに、それはまたそれで考えてしまうことが多い。

例えば自分の都合のほかに、指定した美容師さんの前後のスケジュールが気になり、前後がびっちり埋まっているととても忙しそうで、そこに自分の予約を入れるのはなんだか気が引けてしまったりする。ほかにも、多くの人はスルーするか一言二言で終われせてしまう備考欄に、彼女は沢山のことを書き込む。相談したいこと、髪の悩み、自分の髪質、髪の生え方の癖。自分の髪に関することは事細かに丁寧に書いておくのだ。これには主に二つ理由があるらしい。

一つはもちろん、美容師さんが自分の髪を切るうえで少しでも助けになれば、という思いからである。腕利きの美容師さんならば当然髪を見るだけで注意点や工夫の具合などわかるのだが、それでも当日の流れがイメージできるようにと思って、ポイントを抑えてできるだけ細かく書くのである。美容師さんに「詳しく書いて頂いて助かります」なんて言われることもしばしばあるらしいから、この目論見はうまくいっているようである。

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そしてもう一つ。それは当日自分が周囲によって緊張してパニックに陥って、伝えたいことが伝えられえないで事が進むことを防ぐためである。HSPは人の所作や感情に良くも悪くもとても敏感である。自分の周囲の変化を感じ取るセンサーが、非HSPよりもだいぶ高性能なのだと考えるといいかもしれない。より多くの量を深く正確にキャッチできるうえ、自分との関係の有無だけでなく、自分が手助けできるかどうかまで半ば無意識に検討して、最善を尽くそうとするのが心優しいHSPの性(さが)だ。

したがって周囲に人がいるなか美容師さんとやり取りしなければならない状況というのは、実はなかなかのハードワークで、彼女の頭の中は大抵の場合てんやわんやの大騒ぎである。店内には、まだ仕事に慣れていない新人スタッフも入れば、緊張して入ってくるお客さんもいる。目の下にうっすらクマを作らせた顔もあれば、やんわりと笑窪をつくった顔もある。そんな皆の様々な感情をHSPセンサーがキャッチし、頭の中でそれらを処理しているうちに、結局自分の言いたいことが言えなくなってしまったり、そちらに気を取られて言うのを忘れてしまったりする。備考欄とは、そんなHSPにとっては相手方に自分の考えを前もって伝え、そして必要があれば当日自分も見返すことのできる、ありがたいバックアッププランなのだ。

そのような理由で備考欄をじっくり時間をかけて書き、ようやく無事予約が完了する。そして当日のことをシュミレーションして遅刻や失言など自分が失態をおかさないか不安になりながら、特に前日にはその不安で若干睡眠不足になりながら、当日を迎える。

ここまで思案してことを進めているのだから、当日は当然のごとくかなり余裕を持って美容院周辺に着くように心がける。時間ギリギリ到着、ましてや遅刻なんてしようものなら、一巻の終わりである。厳密には遅刻ではないと言われても、予約5分前を切ったらそれはもう遅刻である。道中の交通網の混雑や美容院周辺で迷うリスクも考えると、そこが初めての美容院である場合1時間程度は早めが好ましい。そんな事を考えて電車の時刻表とにらめっこしながら現地に赴く。

予約時間よりも大幅に時間に余裕をもって到着した後、美容院の周辺をうろうろしながら時間を潰し(迷うのが怖いから決して美容院の近くからは離れない)、予約15分前頃になるのを見計らって美容院に入店する。これは30分前でも5分前でも良くないらしい。30分前では前にお客さんがいる場合プレッシャーを与えるようで迷惑な気がするし、お客さんがいなければなんとなく美容師さんとスタッフさん達に気を使わせてしまう気がする。かといって5分前は若干ギリギリなのがせわしなく、落ち着かないまま案内されてヘアスタイルの相談等をしなければならなくなる。だから早すぎもしなければ遅すぎもしないよう、その絶妙な塩梅を求めて到着時刻の微調整をする。

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そうやってぎりぎりまで可能な限り気を利かせて、無事美容院に行くことができる。多くのことに気が回るHSPにとっては、予定を立てて実行する工程の一つ一つが気がかりで、事前に時間があるだけに自分でもわかるくらい過度に考え悩み緊張し、予定が終わって帰宅の途に就く頃にはぐったり疲れ切っている。予約する度にこの工程を経なければならないのだから、いくら自分がヘアカット・アレンジをしたいための予約だといっても、なんだか億劫になるのは至極当然かもしれない。

こんな具合だから美容院に限らず予定なんて全部嫌だということになるのだが、それでも必要な予定は立てなければ立てないで、適当にしていることがかえって他人に迷惑となっていないかが気になってそれもまたストレスになるから、やっぱり予定というやつはHSPにとって厄介な代物なのである。

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