車好きにはたまらないトヨタの特許
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弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「車好きにはたまらないトヨタの特許」をお伝えします。
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1.嘘みたいなトヨタの特許
私は、速い乗物(自分で操縦又は運転できるものに限る)が大好きでして、若い頃はいわゆるナナハンに乗ったり、F3という二輪レースのカテゴリーでHRCのコンプリートマシンに乗ったりしていました。
四輪の速い車も大好きなのですが、今まであまり縁が無く、死ぬまでに速い車を所有して乗り回したいなと思っております。
そんな私が、とある記事でトヨタ自動車株式会社の特許を目にしたとき、何じゃこれは、と思ってしまいました(あくまで私見です)。
その特許とは、アルミホイールテープ等の導電性材料を車の表面に貼り付けることで空力特性を改善して、「操縦安定性能が低下することを抑制する」というものです(特許第6168157号)。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-6168157/B5DC93C335CF5236513C3641435913F10F52644114404B3F3E1C39EAB1E18BD5/15/ja
「操縦安定性能が低下することを抑制する」とは回りくどい言い方ですが、要は通常の状態において操縦安定性能を向上させるということです。
2.操縦安定性能を向上させる独特の手法
一般的に、操縦安定性能を向上させる場合、車の底面に筋交いみたいなパーツを付けてみたり、左右のサスペンションの取付部を連結させたり、マニアックなところではスポット溶接増しをしたりして、シャシーの補強を行います。
あるいは、サスペンションを純正から有名メーカー製のものに交換するといったことも行われます。
ところが、上記の特許第6168157号では、アルミテープを車の表面に貼るだけなんです。
こういった商品は、数十年前の二輪車雑誌や自動車雑誌の広告によく見られたもので、その殆どが科学的な根拠のないオカルトグッズだったと記憶しています。
でも、今回はあのトヨタ自動車が開発したものなんですよね。
科学的な根拠に基づいたきちんとした製品又は手法だと思います。
3.どういった仕組みなのか
特許公報を読んでみると、従来は自動車が走行すると車体と車体に触れる空気流の双方が正の電荷を帯びてしまう。
すると、帯電によって車体と空気流とが互いに反発してしまい、空気流が車体表面から剥離して意図した空力特性が得られず、操縦安定性能が低下するとあります。
そこで、アルミホイールテープ等の導電性材料を車体に貼り付けることで、正の電位を中和させる。
そして、空気流が車体表面から剥離するのを抑制することで、設計通りの空力特性を発揮できるようにして、操縦安定性能が低下することを抑制するとあります。
具体的には、左右幅方向の中央に貼ることで車体のピッチング(ブレーキを掛けたときに起こるような前後に傾く揺れ)を抑制でき、左右幅方向に対称に貼ることでローリング(カーブを曲がるときに起きるような左右に傾く揺れ)やヨーイング(車体の上下軸を中心とした揺れで車のフロントやリヤが左右に揺れる)を抑制できるとのこと。
素晴らしいですね。
4.アルミテープを貼る場所について
とはいっても、アルミテープを好きなところに貼れば良いという訳ではなさそうです。
空気流が剥離しやすいところ、具体的には車体が凹んでいるところや、内側に屈曲するところだそうです。
つまり、前バンパーの下端や先端近傍の側面、ボンネットの前後端、ルーフの前後端、その他凹凸があるところです。
さらに、バンパー等の樹脂製部品は、他の部分に比べてより帯電しやすいため、効果が大きいようです。
5.この特許を真似したらどうなる?
どうでしょうか?
車好きの読者の人は、是非ともチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
ここで、同じものを実施したら、トヨタ自動車の特許権の侵害になってしまうという心配があると思います。
大丈夫です!
理由は、業として実施しなければ特許権侵害にはならないからです。
つまり、お店が商品又はサービスとして客に提供すると特許権侵害となりますが、個人が自分の車に実施する分には侵害となりません。
私は外観上の理由から自分の車に実施する勇気がないのですが、どなたか実施された感想を教えていただけたら嬉しいです。
あと、中小企業の経営者目線での話をしますと、このようなアルミテープを貼るといった、意外なことでも特許になっています。
御社の実務においても常識を疑うことで、思わぬところに特許のネタはあると思います。
是非とも知財に強くなり、稼ぐ会社になっていただきたいです。
いかがでしょうか?
この記事が御社のご発展に寄与することを願っております。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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