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立体商標って何?

【稼ぐ経営者のための知的財産情報】
 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「立体商標って何?」について説明します。

 商標の種類として、文字商標、図形商標が一般的ですが、他にも立体商標、音商標、位置商標、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標があります。
 これらのうち、音商標以下はあまり一般的で無いため、今回は立体商標について説明します。

 立体商標とは、書いてあるとおりのもので、立体的な形状からなる商標です。
 この立体商標、簡単に登録される場合と、とても難しい場合があります。

 先ずは簡単な例を説明します。
 これは、その商標登録出願に係る指定商品(指定役務)とは関係の無い形状をなしているか(パターン1)、文字や図形を付してこれらの文字または図形によって他との識別力を得ているか(パターン2)です。

 例えば、パターン1ですと、東京都中野区が出願した人形があります。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2020-003738/8CA4FDFA3AC8B3CE1368367A209C344DDC6E147A873E1DDA891E878A3D8D60E0/40/ja
 この人形の商標登録出願では、当初、以下の拒絶理由通知がなされています。
 「本願商標は、人形とおぼしき物の立体的形状を表す6枚の図面から構成されるものです。そして、本願商標はその指定役務中、例えば、「おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」・・(中略)との関係において、当該取扱商品の形状を立体的に表したといえるものであって、・・(中略)本願商標は、単に役務の取扱商品の形状を普通に用いられる方法で表示するものといえますから、商標法第3条第1項第6号に該当します。」

 簡単に言うと、人形の商標で人形を指定商品とする出願は、他人との識別力がないからだめですよというものです。

 これに対して出願人は、人形に関する指定商品(指定役務)を削除する補正をして登録になりました。

 パターン2としては、紙製包装用容器の登録例があります。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2020-011705/5D93BF525D3FB81FB93538C7787E2622AB557FBD352684AD7CB7147206DBE8C8/40/ja
 こちらは、指定商品が紙製包装用容器であり、形状も段ボール箱そのものです。
 しかし、表面に「がじゃまるくん」の文字やその他の図形が付されております。
 この結果、全体として他人との識別力を有していると判断されて登録となっているのです。

 しかし、世の中には上記のパターン1の拒絶理由通知に逆らうように、その商品の形状そのもので登録になった事例があります。

 例えば、ネットニュースで、株式会社明治のお菓子、「たけのこの里」の立体商標が登録となったとありました。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2018-071264/512C24D6116DFC2B6C8692BA11B5DE8FF40BB0EC8CEE6A1D5215F828CF07F11C/40/ja

 株式会社明治は、この「たけのこの里」だけでなく、「きのこの山」も登録となっています。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2017-081777/485C5C2E09DC93A0EC9A5858953D83C207841C1FFE1313602675F5AA3C79A5DB/40/ja

 実は、これらの登録は非常にハードルが高いのです。
 何故なら、審査においては、「たけのこの里」の形状は菓子において同種商品が一般的に採用し得る範囲内であるから、識別力がないと判断されるからです。
 実際に、「たけのこの里」の立体商標の出願において、同様の拒絶理由通知がなされています。

 これを覆す方法は、当該商品が著名であって、日本全国の誰が見ても株式会社明治の「たけのこの里」だと認識していることの立証が必要です。

 この立証を商標法第3条第2項の立証といいますが、かなりハードルが高いです。
 この3条第2項の立証を経て登録になった立体商標はあまりありません。

 3条2項を経て登録になった例として、コカコーラの瓶や、ヤクルトの容器などが有名です。
 一方、サントリーの角瓶は瓶そのものでの立体商標は拒絶され、結局ラベルを張った状態で登録されています。
 あれだけ有名な角瓶でさえダメだったんですね。

 つまり、その商品そのものの形状を表わすにすぎない立体商標は、中小企業にはほぼ絶望的という話です。
 どうしても上記のような形で立体商標を取得したいなら、識別力のある文字や図形を付すことが必要になってきます。

 そういう意味では、下記URLのフライパンはなかなか上手いというか攻めています。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2020-037444/D10AE6E7AEABF97E1C5DBC5A5959B2B76F9BBF145CB428758C745DCB927416C4/40/ja
 どう見ても普通のフライパンの形状で、指定商品「フライパン」で立体商標を取得しています。

 私も最初あれっ?と思ったのですが、よく見ると柄の裏側に模様や文字が入っています。
 この模様や文字があることで権利を取得できたのだと考えます。

 いかがでしょうか、立体商標についてご理解いただけたでしょうか。
 この記事が御社のご発展に役立つことを願っています。

坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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