特許を出すなら意匠も考える
【稼ぐ経営者のための知的財産情報】
弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「特許を出すなら意匠も考える」をお伝えします。
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初めに書いておきますと、今回の記事は特許等の出願をする側、出願等の仕事を受ける弁理士側の双方にとって役立つ情報かなと思っております。
1.特許と意匠は全くの別物
それでは、参ります。
特許と意匠は全く違う法域です。もちろん、保護対象も相違します。
例えば、特許は技術思想を保護するもので、その権利範囲は文章で表わされます。
一方、意匠は物品の外観を保護するもので、その権利範囲は願書に記載の物品名と図面に記載された形状よって表わされます。
2.特許と意匠の相乗効果
このように、特許と意匠は別のものなのですが、互いの権利が関係し合うときがあるのです。
さらに、互いの権利が関係し合うようなとき、特許と意匠の双方で権利化を図っておくと、後々有利になることがけっこうあるのです。
少し前の投稿記事「知財で稼ぐスゴイ会社」で説明しましたスイッチボックスで説明します。https://note.com/norio_sakaoka/n/ne6ab04a28633
画像の赤丸で囲ったところに突起があります。
この突起、スイッチボックスを柱等にビス留めしたたときに、柱等の木に食い込んでスイッチボックスがずれにくくなるものです。
この突起の意味としては、勿論、ずれにくいという特許としての技術的な意義があります。
従いまして、特許出願可能であり、実際に出願されているようです。
ところが、意匠としてみると、外観のデザインとしても意味もあるのです。
これがデザイン?と言われる人もいらっしゃるかも知れませんが、立派なデザインです。
外観上の特徴を備えております。
ですので、意匠としても十分保護することができます。
しかも、こういったデザインは機能を備えたデザインですので、外観を保護するだけでその作用効果も保護できるという利点があります。
勿論、物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなるデザインは意匠として保護されませんが、今回の突起は不可欠な形状のみとはいえません。
このような場合、特許と意匠の双方で出願して権利化を図っておくと、強い権利となり、融通も利くのです。
さらに、意匠の場合、部分意匠や関連意匠で権利の幅を広げていくことも可能です。
3.維持費用がかさんできたときには一方を残す選択もあり
権利を維持していく上でも、特許は権利を維持し続けるとどんどん納付額が値上がりしますが、意匠はそうでもありません。
将来的に、特許又は意匠の片方だけを残すという選択も可能です。
特許も意匠も、出願して必ず登録査定となる訳ではありませんので、リスクヘッジという意味でも良いと思います。
4.費用もお値打ちになるかも
また、図面を特許と意匠で共通化できますので、その特許事務所にもよりますが、特許と意匠の同時出願とすることで、出願費用をお値打ちにしてもらえる可能性が高まります。
特許事務所にしてみても、少ない工数で売上増が見込めますので、お客さんにお勧めしない手はないと思います。
これ、世間ではクロスセルと呼ばれる売り方ですね。
良く言われる例えとして、ハンバーガーを買うとき、少ない金額を足すだけでドリンクやポテトが付いてくるやつです。
ハンバーガーだけを買うと、必ずといって良いほど言われますよね?
これ、店側にとっても客側にとってもメリットがあるからなんですね。
店側にとっては客単価の増大を図れる。客側にとっては少ない予算で追加購入ができるといった具合です。
5.まとめ
こうやって考えてみると、特許出願と意匠登録出願の同時出願って、けっこう使い勝手がありますね。
但し、注意点です。製造方法やプログラム、素材関係の特許出願には意匠はあまり関係ないしてきません。
こういった分野は、やはり特許の一本勝負となってきそうです。
とはいっても、特許と意匠の合わせ技というのはやはり強いようで、過去の判例でも、特許は権利侵害とならなかったが、同じ製品で取得していた意匠権侵害が認められたという事例があります。
弊所でも、特許は拒絶査定となったが、意匠は登録査定となって権利が認められたということもありました。
いかがでしょうか?
この記事が御社のご発展に寄与することを願っております。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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