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日本のかたち (コロナ・ブックス編集部)

 タイトルどおり、内容は、まさに様々な「日本のかたち」を収集したもの。
 章立ては、「もののかたち」「文様のかたち」「精神のかたち」の3部構成で、それぞれ、日本の伝統的な意匠・デザイン等を数多くの写真によって紹介しています。具体的には、生活用品であったり、工芸品であったり、また、建築であったり、風景であったり・・・。

(p26より引用) 障子 shouji 間仕切りとして、また窓や縁の内側に立てる建具の総称で、明障子、衝立障子、襖障子など種類が多い。平安時代は襖障子のことをいったが、現代では中世以降用いられるようになった明障子を指す

 そのひとつひとつを辿っていくたびに、先人の感性の鋭さ・繊細さにほとほと感心させられます。

 本書の中には、本編の写真や解説のほかに、いくつかの付録や短文が載せられています。
 そのなかのひとつ、「人のかたち」をとるものとして「彫刻」と「人形」を対比した谷川渥氏のエッセイは、なかなか興味深いものがありました。

 谷川氏は、和辻哲郎、高村光太郎、谷崎潤一郎の3氏の言葉から「彫刻」と「人形」の差異を浮き立たせていきます。各氏の言葉を踏まえて、「人形⇔彫刻」の対比を「顔・手足・姿⇔胴体(トルソ)」「日本⇔西洋」といった対比として図式化していきます。
 さらに谷川氏は、この図式をヘーゲルの「美学談義」における主張とあわせ、以下のように解説しています。

(p65より引用) ヘーゲルは、彫刻において最も大事なこととして、「現象の特殊相の除外」と「表情の除外」を挙げている。ところが、「現象の特殊相」あるいは「表情」こそが、日本で最も重視されるところのものだといってもいい。「現象の特殊相」を「姿」と、「表情」を「顔」と呼ぶこともできる。それらを除外すれば、西洋には「量塊」と、そして「比例」が残るだろうが、日本には何も残らない。その意味で、総じて日本の芸術は反彫刻的なのである。

 ロダンの「考える人」と中宮寺の「半跏思惟像(弥勒菩薩像)」との対比です。


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