ワクチン接種予約システムへの過信
ワクチン接種予約システムの不備については、システム機能、構築費用、マスコミの対応及び政府の反応等々、いろいろな観点からの議論がなされています。
ここでは、
プロセス実現の手段としての「システム構築」
という観点で、ポイントを絞って問題点を指摘したいと思います。
まずは、今回発生した事象において、
・そもそも、各自治体の予約システムとの連携ができていないのは大問題
との声があります。
この点に関してですが、異なるシステム間で「リアルタイムでの入力データ照会」を行うのは、双方のステムのつくりによりますが、システム負荷は増大しますし、セキュリティへの対処も必要で、それなりの改造は不可避です。
もちろん、そもそもシステム連携を前提としたグランドデザインなくして基本的なDB(データベース)が乱立している状況が根本問題ですが、今この瞬間では(それは重要ではありますが別議論として)現実に向き合うしかありません。
したがって、今回のケースにおいて、しっかりとした全体プロセスの検討を経たうえで、 システム仕様として「リアルタイムでのデータ照会」を諦める決定したのであれば、それは一つの現実的判断と言えるでしょう。
しかしながら、そう言えるためには、その判断にあたって “しっかりとした具体的な検討がなされた” ことが大前提です。
ここでの “しっかりとした具体的な検討” とは、予約/接種プロセス全体を俯瞰した課題の洗い出しと対策の検討を言います。
たとえば、
・システム仕様の不備により、現実的にどういったリスクが発生するか
・そのリスクの影響はどの程度か
・リスクを極小化するための現実的な対策として、どんな方法があるか
・その対策を実施するための具体的手段及び課題はなにか
といった内容を指します。
システムは万能ではありません。その現実を前提に、“「システム+オペレーション」で当初目的とした業務プロセスを実現する” との発想が重要だと思います。
さまざまなアクションの検討において
・現場/現実をしっかり把握したうえで、その中で施策が実際にどう機能するかを具体的にイメージする
そういった「現場力」と「想像力」が圧倒的に欠如している今の状況は致命的です。
ちなみに、こういった状況に対し、防衛省は急ぎシステム改修すると表明しましたが、実際上、いまからできること・できないことはある程度はっきりしています。少々システム的に改善が図られたとしても「オペレーション」によるプロセスの補完は不可欠です。というより、接種現場や自治体でのオペレーションの検討とセットでないと「システム改修の内容」も決定できないはずというのが正論です。
そこまで、しっかりとスコープにいれて検討するのであればいいのですが、今までの様子をみるに「小手先の機能改修」に止まる可能性が高いですね。
これは「デジタル庁」という “組織” ができれば解決されるものではありません。施策の実行を「プロセス(=システム+オペレーション)」と考えるという “思想” の問題です。
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