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数に強くなる (畑村 洋太郎)

 著者の畑村洋太郎氏の本は、今までも「畑村式「わかる」技術」「決定学の法則」など何冊か読んでいます。

 この本では、数の感覚を磨くための身近な方法を、畑村さんらしく分かりやすい文章で紹介しています。

 数に強くなるためには、(至極当然ですが、)先ずは、すべてのものを「数」で表してみることが基本になります。しかし、すべてのものが予め数量化されているわけではありません。
 この点に関して、日本化薬の社長を長く務めた原安三郎さんから教えられたこととして紹介されているのが、以下のような姿勢です。

(p69-70より引用) 原さんと会って知ったのは、物事の先頭に立って動いている人は、「その場で作る」という動作をしているということである。本を読んで知ったり、人に聞いて覚えたりするのでなく、必要なことは何でも、自分が動いてその場で作る。そして判断するのである。・・・
 「たとえ知らなくても、作る努力をしなくてはいけない。必要な数は、見たその場で作れなくてはいけない」

 さて、その場で数字を作る方法として、著者は3つの切り口を提示しています。
 1番目は、「ザックリ」。ケタの大きさを意識し、桁違いでなければよしとする考えです。
 2番目は、「ドンブリ」。その場で作った数字と実物との差が、倍・半分の間に入っていたらよしとする考えです。
 最後、3番目は、「ドンガラ」。イメージしたかたまりの「中身のつまり具合」、つまり比重とか密度の要素を加えるという考えです。

 また、「数を立体で表す」のも数(量)を具体的にイメージするいい方法だと言います。

(p105より引用) 100万という数字も、「たて100×よこ100×高さ100」の立方体をイメージすると扱えそうな気がしてくる。

 さらに、「数を一層身近に感じる」ための具体的表現のヒントとして「1人当たり」で表すことを薦めています。

(p121より引用) 数を「1人当たり」に加工するのは、その生活実感に訴えるためである。実感と合えば納得ができるし、実感と合わなければ疑問が生まれ、考えるようになる。・・・なんでも「1人当たり」にして、生活実感に訴える数を作るのがまず最初なのである。

 確かに「総額」で話をしていると実感がわきません。実感がわかないとアクションにもつながりません。1人当たりとか、1日当たりとかで表してはじめて目標化できマネジメントで使える数字になるのです。

 マネジメントと言えば、ちょっと数学をかじった感じがするこんなフレーズがありました。

(p134より引用) まったく新しいものを作り出して、広げていくときには、どうやって積分を増やすかよりも、どうやって微分を大きくするかと考える方が大事である。

 最後にこの本について一言。
 「岩波新書」にしては異常なほどやさしく読みやすく書かれているのですが、正直なところ、説明の濃さという点では少々物足りなさが残ります。同じ著者の他の著作も併せて読むとより分かりやすいと思いますね。


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