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ブランドのDNA (片平 秀貴・森 摂)

ブランドづくりの3つの鍵

 ブランドについてちょっと勉強しなくてはならないことがあって、以前講演を聞いたことのある片平秀貴氏の本を読んでみました。

 本書の「まえがきに代えて」の章に、強いブランドをつくり上げる組織に必須のポイントが示されていました。

(p4より引用) ブランドづくりにおける共通の鍵を次の3点に集約した。
1.「自分たちは誰をどううれしくさせるために仕事をしているのか」という基本的な哲学が組織を貫通している
2.「顧客が喜んでくれるのならばためらわずに行動に移る」という「筋肉」が組織に備わっている
3.「顧客の喜びこそが自分の喜びである」という利他の精神に根ざしたサービス魂が組織に備わっている

 果たして、自分たちの会社にこういったDNAが移植できるのでしょうか。移植しようとしても不適合症を引き起こさないでしょうか。もし、必要なものがDNAだとすると、それは、遺伝(交配)か突然変異か遺伝子組み換えでないと取り込むことはできませんね。

 長年にわたり評価され続けているブランドを持つ企業は、どうやら私たちが普通に考えているものと「ビジネスの意味づけ自体」が違うようです。

(p236より引用) ビジネスは、人が人をプロフェッショナルに幸せにする永続的な社会的しくみ、として位置づけられていて、利潤の獲得はその永続性を支える重要な必要条件に過ぎない。お金を儲けて幸せになるのではなく、幸せになるための基礎としてお金が必要だ、というわけで、順序がまったく逆になっている。

 そうだとすると、企業としての「価値観」(社員意識・企業文化等も含んだ)そのものが “ブランドの源泉” であり、まさにそういう価値観に対して顧客が共感を抱き認めることが、他社との差異を生み出す「ブランド」となるのでしょう。

進化するDNA

 この本では、世の中に流布している「ブランド」の常識に対し、その誤りを正すために、具体的な実ケース(企業)をいくつも挙げています。

 たとえば、強い「ブランド」といえば、何となく歴史や伝統を重んじていて、「不変」というイメージを抱きがちです。
 しかし、世界最大の食品会社ネスレは、絶え間なく変化し続けているのだと言います。

(p36より引用) ネスレのピーター・ブラベックCEOは「ブランドは変わり続ける。変らないのは消費者との距離だけだ」と断言した。

 強いブランドといえども、顧客に受け入れられ続けなければ見放されてしまいます。見放されないようにするためには、顧客に刺激を与え続けなくてはなりません。
 新たな刺激を生み出す「創造力」が必要です。

 創造力を発揮するためには、「のびのびとした自由な環境が必要だ」としばしば言われます。しかし、ディズニー映画部門総責任者リチャード・クックは逆説的にこう語っています。

(p100より引用) 「我々はボックスの中で仕事をしている。予算制約、時間制約そして規律の制約で区切られたボックスだ。制約があった方が創造力の質は高いものになる

 そのほか、この本で紹介されている「なるほどのフレーズ」です。
 そのひとつ、「サービスの正解」について。

(p134より引用) サービスは、顧客一人ひとり、またその時々で正解が異なる。だから、「何をすべきか」ではなく、「何のためにすべきか」をしっかりと理解せよというのが「リッツ・カールトン式」なのである。

 また「ブランドの専従組織の役割」について。

(p165より引用) そもそもブランドは顧客の頭の中にできるもので、企業がブランドを「管理」することに無理がある。専従組織がやることは、せいぜいロゴの色やサイズを統一したり、テレビCMの基準をつくったり、「ブランドブック」を作り社員に配布したりする程度である。それはブランドの形を整える作業に過ぎない。

 確固たる「ブランド」を築きそれを維持している企業は、一貫した理念を掲げるとともに、その理念を社員全員・会社全体に浸透させるための具体的努力を重ねています。
 さらに言えば、「顧客を喜ばせることを自らの喜びと感じる社員が『ブランド』を作る」ということです。


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