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アインシュタインの夢 (アラン・ライトマン)

 先に読んだ「ザ・プロフィット」という本のブックリストで紹介されていたので読んでみました。
 「ザ・プロフィット」の著者スライウォツキーは、この課題図書により、読者に対して「常識に縛られない自由な発想を促す」ことを目論んだようです。

 内容は、1905年、特殊相対性理論の完成を目前にしたアインシュタインが夜ごと悩まされた時間に関する奇妙な夢を、現役物理学者でもある著者が、「30の小編」に仕立てあげたものです。

 相対性理論における素人感覚的な柱のひとつは「時間の相対化」だと思うのですが、「絶対的な時間」という固定観念にとらわれない「多様な時間」にアインシュタイン自身が悩まされたというモチーフは秀逸です。
 時間が円環である世界、時の経過とともに秩序が増す世界、時間が静止する世界、時間の中心にいくほど時間の流れが遅い世界、時間が逆に流れる世界等々、さまざまな時間相を古都ベルリンを舞台に叙情的筆致で描き出して行きます。

 ただ、どれもやはりある意味「時間に囚われた世界」です。30の小品の中には「時間のない世界」も描かれていますが、それは数々の静止したイメージの陳列です。

 本書を味わうには、私にはまだまだ文学的感性が足りないようです。
 時間を別の視座から考えるという点では、以前紹介した「パパラギ」の方が、素直に楽しめ、またいろいろと考えさせられました。


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