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手にした人だけが次の時代に行ける黄金のボタン (小楠 健志)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 自分の興味を惹いた本だけ読んでいると、当然偏りが出てきます。もちろん好きでもない本を読むのは苦痛以外の何物でもないのですが、とはいえ少しでも手に取る本の幅を広げる方法のひとつが、外から与えられた本を読んでみるというやり方ですね。

 そういう意味では、本書は “黒船”。レビュープラス(当時)というブックレビューサイトから献本していただいたので読んでみたものです。

 内容は、ちょっと変わった経歴の著者が、交通事故専門の治療院を開院し発展させた起業ストーリーです。

 もともと著者の小楠健志さんプロの格闘家でした。その後、サラリーマン生活を経て格闘技ジムを開設、その流れで整骨院を開きました。「治療家」としての技術を磨き、その後「交通事故治療」にフォーカスする等マーケティング活動にも力を入れ、それなりに患者数を伸ばしました。
 しかしながら、そうやって増えた患者も結局はレントゲン設備等が備わった病院に行ってしまう、著者は、自分の力の限界を感じたと言います。

 大きな壁にぶつかった著者は、患者の悩みを聞いていくうちに、自分自身の活動に「大義」を見出します。

(p47より引用) 腰痛や肩こりの治療のように個人が抱える「主観的」な悩みとは違い、加害者も被害者も関係してくる交通事故治療は、「社会的」に解決が求められている「公的な」悩みでもあるのだと感じました。・・・
 その瞬間、私の中で「大義」の意識が生まれ、新たなスイッチが入ったのです。

 本書は、スマートなマーケティング理論の著作ではありませんし、大仰な経営思想の書でもありません。整骨院を開き、試行錯誤の結果大きなビジネスに花開かせた著者の実体験を記したものです。自らが体得したビジネスの要諦だけに、リアリティと親近感を抱くことができます。

 たとえば、会員組織として「ジコサポ日本」を立ち上げた当初、ネットからの資料請求や入会希望者の受付を試みたときの経験。

(p83より引用) 説明会の開催では、たった3回、2週間の間に40人以上もの人が入会してくれたのに、資料請求では4カ月かけてもゼロ。そこでようやく、「ああ、このやり方ではダメなんだ」と気が付きました。・・・やはり、多くの人に直接話を聞いてもらうことをやらなくては、人を動かすことなどできないのだと実感した出来事でした。

 さて、本書を読んでの感想です。

 大きな文字の薄くて軽い読み物ですが、著者にとってもこの出版は新たなチャレンジの一つだったのだろうと思います。
 もちろん、著者が立ち上げたビジネスモデルの啓蒙本(PR本)との色合いが感じられるところもありますが、そこは当然のこと、PR活動は組織における重要な活動のひとつです。
 ともかく、 “自ら考えて、自ら動く” という姿勢は素晴らしいことです。



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