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母の箸

母の箸は父と夫婦箸

奈良の鹿の角で出来ていた

父と仲良く夫婦箸

父があの世に旅立って

母はずっと鹿の夫婦箸を使っていた

でも

息子がね

気がついた

母の使っている箸の長さがちがうって

「ばあちゃん、箸の長さが違うね」
と聞くと
「じいちゃんの箸と一本ずつ使っているの、じいちゃんといつも一緒」

母は父のことが大好きだったから

私は親として父のやっていったことが赦せなくて

決して父を褒めないし、そこは母と意見が食い違い

でもまぁ私の父だから仕方ない

母の大好きな人だから仕方ない

母は父を支えていた

母がいたから父は成り立ち

お互いに支え合っていた

わがままな父を母はよく支えていた

喧嘩もするけど

なかよしだった

父は昔、母に向かって

「俺とおまえの心と心がつながり合っていればいい」と言ったらしい

その言葉は母の宝物

みんなが羨む言葉だった

だから母はずっと父と一緒にいたかった






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