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生まれる日

雪化粧した松の木のある中庭にぽつんとたたずむ石燈籠

懐かしい祖父の家
わたしの生まれた日
大雪が降っていた

母が出産のため実家に帰る
父はあとから来たものの
手持ち無沙汰でスキーにゆく

良いご身分だこと

わたしを取り上げるのは母をも取り上げた産婆さん

伯母、母、従姉二人、わたしは同じ人の手を借りる

縁のある人

わたしは首にへその緒を巻いて仮死状態で生まれ出る

祖父は生まれたばかりのわたしを見て

娘は黒人の子を産んだのかと思ったと
後々まで真顔で話す

父は黒人か…
そんなはずはない

わたしは多分生まれ出たくはなかったのだろう

魂の成長のためにいろんな苦労を背負って降りて来る

わたしの魂はそれがいいと言って降りてきた
魂は納得しても
肉体を持つ人間はきっと「はい」とは言えなかったのだろう

多分ね、わたしの予想

生き延びて、生き延びて
泣きながら生き延びて

今、ここにいる
神に出逢い、導かれ

もう二度とこの世降りて来たくない
だから最期に最高の修行をして
あの世に戻る

それがわたしの理想かな

母も晩年にはそんなことを言っていた
「もうこの世には降りて来たくない」と

「いいけどさぁ、それでは修行の速度が遅くなるよ」
とまるで他人事のようにわたしはいつも言い返す

若い頃から「もう二度と降りて来たくない」と言っていたのはわたしの方だったはずなのに

今は分からない、分からない、分からない

ちょっとだけもう一度だけ生まれ変わってもいいのかななんて…



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