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心此処にあらず

息子は自分の家に帰ってゆき

入院中の従姉からは電話があった

雨戸を閉めてひとりぽつんとリビングで

母の座っていた椅子にたたずむ

あぁさみしい

ひとにふれるとさみしさは増す

母がいなくなってから

ずっと心此処にあらず

魂をどこかに飛ばして

肉体だけで

ただ息をして
食べて
寝て
トイレに行き
風呂に浸かるだけの

放心状態

何をしているかも分からない

息子と喧嘩しても人目をはばかれず
わめき散らして

しかられる

ズタズタのぼろぼろ

えっ、何、わたし
どうしたの?何してるの?

本当に心此処にあらず

幼子のまんま
迷子のまんま
心のなかの私は母だけを追い求める

だから肉体はくたびれを感じない

おかしな感覚

ふしぎな感覚

今まで味わったことのない感覚

肉体と心が離れてるっていうのかな

つらくて、かなしくて、きつくて

溺れているはずなのに

まだ生きている

早く楽になりたいよ

そんな感じ

母がいない現実を全て受け入れられているのかといわれると

今は半々かな…魂は生きてあなたのそばにいる

でも肉体はない

つい最近までは全く、全く受け入れられなかったんだ

なんにもなんにも受け止められなくて、めちゃくちゃな自分をさらしてた

死はその先の曲がり角を曲がっただけ、見えないだけ

そんな実相の世界の話しを何回も何回も聞かされていたけれど

何十年も聞いていたけれど聞くとみるとは大違い

じゃあ、お母さん出てきてよ

教えてよ

夢でもいいから


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