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簡単には死ねません

昨日の晩

粕汁を作る
生協で買った酒粕とスーパーで買ってきた鮭のアラ、家にあった大根、人参、キャベツに玉ねぎを入れて

水曜日にも粕汁を作ったがその時は煮干しで出汁をとり、大根、人参、豆腐をいれた

美味しかったが何かが足りない
そう思い、その日はいいタイミングで鮭のアラが売っていた

鮭のアラを入れたら数段と美味しくなる

粕汁と漬物とおにぎりを食べ
しばらくしてから風呂に入る

とっても気持ちがいい

ところが風呂あがり
具合が悪くなる
お腹が痛くなり
胃がむかむかしてくる

トイレに立てこもり
上から下から襲われる
あげくだし

一度トイレから這い出すものの
また逆戻り
今度はボウルに新聞紙をひき吐瀉入れを用意する

昔、母が奈良漬けを食べ
具合が悪くなり
そうやっていたことを思い出す

母は特段の下戸だった
奈良漬けを食べるだけで酔っぱらう
酒屋さんの娘だったくせに

私も下戸だが
さすがに奈良漬けを食べて酔っぱらうことはない

体調が悪かったのか
またあげくだしを繰り返す

母の最期の時
あげくだしをした

あぁ、私にもお迎えが来るのかな
それならそれでいい
「ありがとう」

しばらくトイレに引きこもる
また死ぬかと思った

でも「人間はこんなに簡単には死ねません」

ふと、こんな言葉が湧いてくる

トイレからかろうじて出られ
しばらく休む

風呂あがりで髪の毛が濡れたまま
少し温かくした部屋にドライヤーを持ち込んで
髪の毛を乾かす

あぁ、ここで死んだら楽になれるのに
でもやっぱり死ねません

トイレを掃除する
吐瀉物をゴミ袋に入れてゴミ箱に捨てる

もうやけくそだ
風呂掃除、ついでに洗濯もする

やっぱり簡単には死ねないんだ
心配してくれる人はいない

ひとりぼっちで布団に潜る

翌朝にはいつもと同じ朝が来て
外からは春を告げるうぐいすが啼いている

初啼きだ

やっぱり生きている


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