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母と一緒に


天気のいい土曜日に
電車にのってお出かけします 
黒い大きなバッグに母を入れて

誰にも分からないように
こっそりと

あんなに重たかったはずの
母の骨
カタカタいわせないように
上手く持てるかな

軽くなった母を持ち 
わたしは電車を二度乗り換える

母の遺骨を粉骨しに行く

こうして一つ一つを
自分でやって
母はわたしの胸の中
いつもいつも一緒にいる

今日は母のお骨を砂のようにサラサラにする
骨を砕くのに一時間余り

金属を抜いたり
骨を細かく潰してゆく
そして最後に機械で砂よりも細かくなって

その行程を見つめている

母がいないのは分かっていたが
その現実を見せられて
むなしくなる
かなしくなる
つらくなる
泣きそうになる

わたしのこころは出たり入ったり
少しずつ少しずつ
立ち直ろうとしているのか

これがグリーフというものらしい
一番最初は自分の身体をもがれたように
次には気持ちがあがったり、沈んだり
その繰り返し
それがうまくゆかないと病んでしまう

というものと…

サラサラになった母の遺骨を見つめると
わたしはまたガックリと頭を垂れる

骨壺のなくなった母の骨
袋に詰め
小さくなって木箱に入る

帰りは行きの半分になった母を抱え
また来た道を戻ります

ひどくくたびれて
何もする気力も出なくなり

そう言いながらも
母の好きだったデパ地下の魚屋さんで鯖とお寿司を買って帰る

母にお寿司をお供えし
母のために鯖の味噌煮を作ろうと

「お母さんのように上手に作れるかな」

母が旅立ってから初めて作る鯖の味噌煮

母の得意料理

明日の朝に食べようね

お母さん


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