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チャンディーガルは見ていない 【インド#26】

キャンプ場のホコリアレルギーのせいで、咳がどんどん酷くなっていった。

ゴホゴホと咳き込んで止まらなくなるので、ドミトリーに泊まると夜中に同室の人たちに迷惑をかけるため、次の町のチャンディーガルでは個室の普通のホテルを予約した。

リシケシュからのローカルバスが、エアコンなしで猛烈に暑い中、砂埃がじゃんじゃん入ってきて、ぐらんぐらん揺れて、遅れに遅れて、チャンディーガルの町のよく分からないところに夜に到着した。体調は相当悪くなっていてフラフラするので、Uberを呼ぼうとするが、これがなかなか捕まらない。夜ではあるが、見た感じは、チャンディーガルはものすごく大きな都会に見える。しかし、デリーほどたくさんUberが走ってないのかも知れない。
仕方なく、流しのリクシャーを捕まえた。ホテルの場所を地図を見せてもよく分からないと言われて、Googleマップで案内しながら行ってもらうが、咳き込んでいてしんどい。
そう考えると、Uberは住所を打ち込めば何も話さなくてもその場所に行ってくれるから、こういう時こそ便利だなと思った。

体調が悪い時に嫌なことが起こると、悪いループに入る気がしてしまうのだが、ホテルに着いてから嫌なことが起こった。
名前もパスポート情報も予約の時に伝えていたし、バスが遅れているからチェックインが夜になるとも伝えてあったのに、チェックインをしようとフロントに行ったら、「あなたをここに泊める訳にはいかない。」と言われた。
理由を聞くと、「中国人はここには泊まれないので」と言われる。
は?
私は日本人だし、そんな理由で泊まれないのはおかしい、と抗議する。
すると、「中国人と日本人は無理。」と言う。
意味が分からない。
私、予約したし。
日本人やと個人情報に書いてあるし。
OKって返事くれてたやん。
とbookingコムの画面を見せると、「決まりなので、ソーリー」と言って頑として拒否。
お前じゃ話にならんから、オーナーを出せと言うと、もう夜なのでいないと言い、「絶対にここには泊まれないから、よそを当たった方がいい」と言われる。
膝から崩れ落ちてしまった。
もう21時半を過ぎていて、初めての町でよく分からないへんぴな場所のホテルを予約してしまった挙句、泊まれないと言って放り出されても困る。それに、体調がすこぶる悪い。
「じゃあ、この辺で他に日本人が泊まれるホテルをどこでもいいから教えて。」と言うと、その男は私のiPhoneを手に取り、bookingコムを見始めた。私のためにホテルを探してくれているのかと思いきや、違っていて、ここのホテルのページを開いて日本語設定を英語設定に変えて、何やら探している。
「ねぇ!何してんの?!」と怒りながら聞くと、私が泊まれない理由が書いてある注意書きを探しているらしい。
頭に来たので、「もうそれはいい!それを見ても見なくても私はここに泊まれないなら、夜遅いから別のホテルを探したいの!別のホテルを探さないなら返して!」とiPhoneを奪い返した。
iPhoneの開いてあったページを見せながら、「あったあった、コレ」と男は嬉しそうに言う。
そこのホテルの情報の、下の方にこう書いてあった。

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を最小限に抑えるための政府のガイドラインにより、この宿泊施設は当該ガイドラインが存在する期間中、一部の国からのゲストを受け付けておりません。

booking.comの野郎から抜粋

何それ。
知らんがな。
なんで日本も入ってんのよ。
その期間中なわけね、今。
いや知らんし。

しかし、この注意書きを読んでいなかった私の落ち度でもある。グッと堪えて、あっそう、という感じで流して、適当に評価の高い日本人も泊まれる宿をその場で予約した。
Uberがこれまた全然捕まらないから、タクシーを呼んでくれと言っても、「今はできないから15分歩いて広い道に出て捕まえろ」って言うのにも腹が立った。怒り1000%で9:40にその宿を出て、歩いて流しのリクシャーを捕まえた。
適当に予約したホテルは、このホテルからかなり遠く、40分ほどかかり、これまた逆方向の町外れの宿に到着。
晩ご飯も食べてないしフラフラで、咳き込んでホテルに入ると、そこのフロントの人はとても優しく対応してくれた。
Uberが捕まらなくて困ったと言うと、UberよりもinDriveというアプリの方がこの地域はメジャーだから、明日それを教えてあげると言ってくれ、ヘトヘトになりながら部屋に入った。

真っ白で綺麗で清潔な部屋で泣きそうになった。テレビをつけたら、偶然にも私の好きな映画「若さは向こう見ず」が放送されていて、キャンプ場で何度も聞いて踊って笑った「Balam Pichkari」が流れて、この偶然に救われたような気がして、ベッドに溶けるように眠った。

翌朝になっても咳が全然治らないから、近くにあった薬局で咳止めの薬3種類と咳止めシロップを買った。体力が奪われていく気がしたので、休んだ方がいいと思い延泊したが、どこにも観光にはいかず、部屋にこもっていた。
本当はラオスのルアンパバーンで会ったサイモンから、「スイス人建築家のコルビュジュエに計画されて作られた都市としてインドのチャンディーガルは独特で、特に建築が面白い」と聞いていたので、楽しみにしていたが、咳がひどいので、観光は全て取りやめて、ひたすら寝ることにした。

咳止めを飲んでも全然良くならないなぁと思いながらも、信じて飲み続ける。
チャンディーガルには、ダイソー、インド1号店があると聞いたので、inDriveというアプリでタクシーを呼んでもらい、ダイソーの入っているショッピングモールにだけ出向いたが、ダイソーには、チャンディーガルで住んでいる人向けの生活用品ばかりが売られていて、旅人が買い足したいものは何もなかった。
仕方なく、そこのフードコートでチキンシズラーを食べて帰った。
このモールには、これまでとは違うターバンを巻いて髭を蓄えた恰幅の良い男性が、みんなで肉を食べまくっていた。ラジャスタン州の民族衣装的扱いのお祭りの時用のターバンとは違う、日常的なターバン。
チャンディーガルは、パンジャブ州なのだとその時に気づいた。シィク教の総本山ゴールデンテンプルのあるアムリトサルと同じ州で、州都でもある。TVを見ていてもターバンを巻いたラッパーのチャンネルが増えた気がする。地域によって住む人の特色の違いが感じられるのは、広大なインドならではかも知れない。こういうのを感じられることが、旅の醍醐味だなぁと思った。

それから、bookingコムに抗議のメッセージを送った。
これは人種差別だ、とあの瞬間は頭に来ていたのでそう思ったが、コロナ禍で自分達を守るためには仕方ない政策だったのだろうと理解はする。だけど、今はもういいんじゃないの?とも思う。でも異国の政策に口出しする権利もない。ただ、日本人がダメなら納得いく理由を教えてほしいし、もっと分かりやすい場所に記載するべきだし、予約後にでも教えてくれてもいいのでは?と送った。
明確な返答はまだない。

ショッピングモールも、道路も何から何まで巨大で整備されていたが、どこに行くのも遠いし、何しろタクシー代がインドにしては相当高い。
部屋でじっと横になっているしかないな、と思い、居心地の良い部屋でTVを見たり眠ったりをひたすら続けて鼻水は止まったし、他に症状はないのだが、なぜか、咳止めの薬を飲んでいるにもかかわらず、咳だけが治っていかなかった。

やたらとインドの薬局で薬を買う旅人
これはマーケティングと呼ぶとnoteで学んだ。
DAISOによって何も買わないで帰るの初めて。
大好きなランビールの新作映画封切り!
パンジャブ州のフードコート


チャンディーガルに来た理由は、もう一つあって、随分前からどうしても乗りたい列車があったから。
そのためには何としても体調を整えたかった。

ちなみに列車のチケットはオンラインでは、直近の全てが完売していた。それでも私には勝算があった。どうにか列車に乗るためにかなり気合いのいるプランを立てていたので、虎視眈々と列車に乗れるタイミングを狙っていた。


憧れの列車の話は次回に続く!


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