破戒 雷蔵!

 雷蔵観たさ、市川崑監督の名作の一本、島崎藤村の傑作、破戒(1962年、和田夏十脚本。宮川一夫撮影)を観に、大映の女優たち特集を開催中の神保町シアターへ( 2022・11・1 )。

 雷蔵演じる、被差別部落出身の小学校教師丑松の悶える苦悩、ひとりで抱えた大きな果てしない悲み、、。配役も上手すぎる人ばかりで、三國連太郎や岸田今日子、船越英二、中村鴈治郎にはもちろん納得以上の素晴らしさで、藤村志保も初々しくうってつけ。杉村春子さんはどんな小さな役を演じていても、もう前のめりで絶対見逃したくない姿勢で味わいたく、いつも唸ってしまう(杉村春子が出ているとは知らず、少しでしたが画面に出てきた時の喜びひとしお)。

 長門裕之演じる雷蔵の教師友達が、役柄でもプライベートでも育ちがいいおぼっちゃまさが漂い、且つ上手で。小さい頃にテレビに出ていた年配者としての長門裕之しか知らず、いい役者だったのをその時に知った次第で、嬉しい収穫。

 雷蔵の、ラスト近くの教室で生徒たちに告白する場面では、明治後期の小学校の先生が、生徒たちに話す言葉遣いが上品で美しい日本語なので、それに驚き敬意を示したくなり、その美しい長いセリフ回しで語る、生徒たちへの謝罪と感謝、そしてお別れの言葉。雷蔵がもう丑松その人に見えて、涙が自然と溢れ出てきた。雷蔵の七変化がここにまたあり。

 今年1月から、大映4K映画祭で雷蔵の映画が何本も上映されるようで、映画は映画館で観たい派なので(そういう人も減っていると思いますが、、長年家では映画を観ていない)、もうすぐ映画館で雷蔵が観られることが楽しみ!

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