私的にここ1週間に観た映画、純愛3部作、「小さき麦の花」「ベネデッタ」「エンパイア・オブ・ライト」 そして気になる3月10日ののんの行方

 2023年1、2月は雷蔵の映画を観に何度も映画館に足を運んだので、何度も予告編が流されていて何だか惹かれた映画、「小さき麦の花」(2022年。 リー・ルイジュン監督)を観に行った先週末(8歳息子と。この映画の予告編を見た息子のリクエストで)。ほんわかした映画だと思いきや、中国の貧しい農民のヨウティエと妻クイインの厳しい現実と日々の生活が、四季折々の自然の中で描かれていた。力を合わせて作物を作り、家をも作り、家族や村人にも疎まれながらも、2人は慎ましく愛の中で生きていく。ヨウティエの優しいこと!幾つも忘れがたい2人の様子が描かれていて胸が熱く痛くもなったけれど、村の人にあんまり妻のクイインを大切にしているから、そのうち紐で繋いでおくのではとヨウティエがからかわれていたこともあって、屋根の上で寝る晩は(暑いからか?)、そんな風に言われたことだし、屋根から落ちるといけないからと、自分のズボンとクイインの手を紐で結えて寝るシーンに涙腺がまず緩み、やっと収穫した小麦を製粉最中に、麦の胚芽などで首筋、背中など肌が被れたクイインを、用水路的な流れの早い川で、丸太を掴みながらヨウティエが背中を洗ってあげている後半のシーンにもジーンときて、麦の穂で手の甲に作る花の記しが胸に残る。貧しいけれど、逞しさも人一倍の優しさがあるヨウティエ。過酷な生活と仕事を共にするロバにも、いい人ばかりでもない村人達にも、そして最愛のクイインへの愛の深さも計りしれないヨウティエ。美しく純度の高い愛に触れられて、こんな映画を観られて幸せと感謝の気持ちが湧き上がる。

 その翌週は、これまた気になっていた「ベネデッタ」(2021年。ポール・ヴァーホーベン監督)を観る。強烈!
17世紀のイタリアの修道女の同性愛についての裁判があり、そのセクシュアリティの描写が細かく残っていたようで、それらの詳細がポール・ヴァーホーベン監督の映像になってみると、ベネデッタを巡る時代背景、人物、出来事等がすんなり入ってくるから不思議。且つ、挑発的でアクが強く、欺瞞か奇跡か、ベネデッタに翻弄されて飲まれて、鑑賞後はぐったり。でも好み。シャーロット・ランプリングも修道院長役で出ていた。まる。

 と、両極端な映画、ある意味純愛(ヨウティエとクイインの純愛とベネデッタと神の純愛!?)映画を観て、その余韻の振り幅で気持ちがザワザワ。と、映画評を頼りに、バランスがとれるような映画を直ぐに観たくなり、「エンパイア・オブ・ライト」( 2022年。サム・メンデス監督・脚本作)を観に行く。完全にやられた!こんな映画を作ってしまうサム・メンデス監督(脚本作も)!年齢が上がってきての独身女性で心を病んでいたヒラリーの気持ちも、黒人青年で明るく広い心のスティーヴンの優しさも、劇場従業員達の家族的だけれど一歩引いた思いやりも、映画全体から映画愛を受け、全ての台詞の言葉に魅了され、ヒラリーとスティーブンが惹かれて愛し合うのに愛しく共感できた。既に言われているように俳優陣もいい!サム・メンデス監督は主演のオリヴィア・コールマンにヒラリー役を断られたらこの映画を作ることもしなかったとか、オリヴィア・コールマンも、どんな役か知らないで脚本を読む前に、サム・メンデス監督の作品の出演依頼を受けたとか。サム・メンデス監督は、“ オリヴィア・コールマンは、クーパー・ミニの車体にフェラーリのエンジンを積んでいるような俳優です “とも言っている。正に。青年役のマイケル・ウォートもオリヴィア・コールマンに負けていない、抜群だ。これは観ないと。
 
 真っ直ぐだったり歪んだり、複雑だったりの純愛映画を立て続けに3本観た先週末からの今週。ここ最近は雷蔵をはじめ、昔の素晴らしい俳優の素晴らしい名画ばかりを映画館で観ていて、今週は私的には上記の傑作純愛3部作を観たこともあり、3月10日の日本アカデミー賞の開催が少し気になる。ノミネートされた映画は全てではないけれど何本か観た上で、個人的に推すのは、心が強く揺さぶれられたのは、「さかなのこ」の、のんと、ノミネートはされていないけれど「ケイコ目を澄ませて」の、三浦友和がよかったな〜(ボクシングジムの会長に見えた!)。映画で、知らないうちに心を大きく揺さぶられたい、映画にどっぷりハマりたい。そういう映画が体と心にずっと残っていく。映画からダイレクトに愛や力がもらえる。まだまだまだまだ映画が観たい(好きな映画は何度も)!映画がたまらなく好き。

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