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影の立役者、コリアンダー

スパイスをグループ分けする、というのはなかなかに難しい作業です。

スパイスを学びはじめた頃、いろんなスパイスの本を読みました。目次ではたいてい、スパイスがなんとなく区分けされてページ構成されています。どれもいまいちピンとこず、でもそれはわたしの勉強不足なんだろうな、と思い続けてきました。

スパイスを仕事にして経験を重ねても、その違和感が払拭されることがなく、ずっとモヤモヤを抱えたままでした。結局スパイスは、個々の個性が強すぎて、的確な分類などできないのだ、と、自分を納得させていました。

コロナ禍で、料理をせずに、対面せずにスパイスを伝える方法を考えていました。それでできたのがスパイス大学の原型なわけですが、どうわかりやすく、食材とスパイスの組み立てを説明したらいいのか、という問題に立ち返ったとき、結局のところ、自分がある程度スパイスを「分類」して構築していることに気づきました。それをビジュアル化したのが、「スパイス・マトリックス」です。

でも、話したように、スパイスは個々の個性が強く、すべてがいろんな役割や要素を併せ持っています。分類に悩むスパイスもあります。自分で使うときは曖昧さがあってもその都度役割を変えて使い分けられるけれど、人に説明するにはなるべく曖昧さを排除したほうがいい。

悩んだスパイスのひとつに、「コリアンダーシード」があります。コリアンダーは、柑橘みたいな穏やかな爽やかな香りと、クミンに似たエスニックな香りがあって、そのどちらの特徴が前面に出るかは、使う料理や合わせる食材によって変わります。

一緒にクセの強いスパイスや食材を使うときには、その爽やかさ(穏やかさ)が、そのクセを緩和してくれます。逆に、風味のあっさりした食材を使うときには、エスニック感が前に出てくる。

敢えて「エスニックな香り」のグループに分類したのは、クミンと組み合わせて使われることが多く、つまりは料理にエスニック感を与える結果となることが多いから。はじめはエイヤ、で決めましたが、同じグループにいたほうが説明がしやすいことが、マトリックスを使った授業をするうちに見えてきたので、著書「スパイス・マトリックス」でも、その分類を採用しました。

コリアンダー。あまり表に出て主張はしないけれど、スパイス調合のときにはなくてはならない、影の立役者です。

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