ヴィンテージ:8
桐摛はアパートの一室で灯りも点けず虚な眼をして板張りの布に筆を走らせていた。
油絵
パレットの面積全体を目一杯に使ってあらゆる色々を白い布に塗りたくっていく。
彼女の周囲には同じ大きさの描き終わったのであろう、色が塗りたくられた板張りの四角が床にばら撒かれている。
コンクリート打ちっぱなしの彼女のギャラリーはそんなもので埋め尽くされている。絵ともいえぬ黒い塊の破片が光に反射して艶めくように色があるようにないような何かが其処彼処に。
彼女は隣に立て掛けていた絵が渇いたのを知って四角一部に蹴っぽった。
そしてまた彼女は描き始める。
その9へ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?