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共感覚

私には、不思議な能力がある。

それは、数字から色が連想され、
そこから情景が浮かぶ能力だ。



小学生の頃は苦労した。
足し算や引き算が苦痛だった。

計算カードで【3+8】と見るだけで、
元気な黄色と落ち着いた深緑が邪魔をして
素早く計算できないのである。
計算カードでタイムを競うのは、
計算が遅い私にとっては苦行でしかなかった。

一方で、小学1年生の時から4年間、
そろばん教室に通った。
私は数字が大好きだったのだ。

教科書を開くと、色鮮やかだった。
鮮やかさに気を取られて集中できない時は、
そろばん教室で教わった暗算が役に立った。
大人になった今でも、
いくら一桁同士の足し算といえど、
架空の珠を弾かないと計算できない。

私は、迷うことなく理系女子の道へ
ずんずんと突き進んでいった。



私のこの不思議な能力は、生活を豊かにした。
誕生日の数字を見るだけで、
相手の為人がふんわりと想像できて、楽しかった。



私の好きな数字は13だ。
素数であることも、美しさの一つだと認識している。
私は、13のことを、ミモザだと思っている。

ふわふわとした小粒の花を咲かせる
鮮やかな黄色のミモザ。
とても13らしい姿だ。

簡単に掴むことのできない、
儚くて淡い情景によく馴染む(であろう)ミモザ。
私のモノには一生ならないと思わせられるような、
身近に感じられる高嶺の花。

せっかくだから、花言葉を調べてみる。

ミモザの花言葉は「感謝」「友情」「密かな愛」「エレガンス」です。 なお西洋では「Secret Love(秘密の恋)」や「Sensitivity(感受性、または思いやり)」といった花言葉があります。 恋愛や人の思いにまつわる花言葉が多いので、大切な人への贈り物にはぴったりな植物です。

やっぱり13だ。
花言葉と自分自身の感性の辻褄が合うと、
自分の能力を肯定してもらえたような気持ちになる。

13はどこにでも居るようなありふれた存在だけど、
唯一無二で、よく見ると可憐で、繊細で、
知れば知るほど美しいキャラクターを持っている。
私は13のことを、とても大切にしたい。



私が大切にしたい人のうちに、
1211という数字を持っている人が居る。
1211は深い緑とグレーに近い白。
例えるなら、
大きな針葉樹にしんしんと降り積もる雪のよう。


この、大きなもみの木の下で、
太い幹に背を預けて、コンビニで買った
100円のブレンドコーヒーを飲みたいな。
寒いけど、それがコーヒーを際立てる。
気付いたら陽も落ちて大きな雪が降ってきた。
もうこんな時間か、と時計を見るも
まだ午後5時過ぎ。
8時かと思って焦っちゃった。
でも、そろそろ帰らなきゃね。
また、この木の下で物思いに耽ろう。



そんな色。


私が持っている数字は220。
220は、キンと耳をつんざくような水色と、
今にも解けてしまいそうな柔らかい白。


学校に行かなきゃ、と、自転車に足をかける。
目に映る景色は、真っ白な銀世界。
田舎特有の、なにもない“白”だ。
雲と雲の隙間から少しだけ、聡明な青が見える。
今日は日中暖かくなりそうだな。
ぎりぎりまで寝てたい私は、
自転車のハンドルを片手にパンを咥える。
通勤中の先生に見つかったら、
職員室に呼び出されるだろうな。
優等生売りの私には、避けたい出来事だ。


そんな色。



1211と220。
冬の夕方と早朝。
情景から考えると、共存できる数字ではないが、
私の白い息がふわっと見えてくる数字。
なんだか口元が緩む数字。
抱きしめたい数字。


私は数字と生きていく。
降ってきた数字に、私を当てはめながら、
居場所を確立していく。
今日もたくさんの景色と出会う。

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