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ヴィンテージ:10

池袋北口の西武デパート出入り口近くのたまり場で10分くらい待ってるとモモカが戻ってきた。手には札束が親指で半分に折り畳まれ握られてる。
「ごめん。待たせた」
「全然待ってない。で、次はどこ?」
「今日はこれで終わりかな。さっきミヤギから連絡あってもういいって」
「そっか」
西武デパートから地下を通って山手線で渋谷を目指すとミヤギのもう一つの家を目指す。道玄坂の路地のボロっちい雑居ビルの3階。
「ただいま。トラブルなかったよ」
「おお、おかえり。あんがと」
モモカは札束をミヤギに当たり前のように手渡す。彼の仕事を手伝うことが家賃代わりだった。
「リッコには仕事教えた?」
「やだ。まだ早いって。ヨゴレはあたしだけでいいの」
「あそ。こっちはちょっとトラブって明日歌舞伎町行くことになった」
「あたし行こうか?」
「んー、じゃあ一件頼む。あそこなら女相手でも問題ないだろうし」
「カマかける?」
「頼む」
「おっけ。じゃあいつもので」
「頼む」
リッコはリッコとしてやり取りを見て見ぬ振りをし続ける。所々合皮が裂け剥がれたソファに座りまん丸のヒツジのぬいぐるみを胸に抱えて。
昨日たまたま前を通ったGIGOでミヤギが取ってくれたヒツジを模したキャラクターのぬいぐるみ。丸くて可愛くておねがりしたらくれた。モモカはそういうの好きじゃないから私のものになった。

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