見出し画像

アーティストは自己表現のプロなのだけど、どうやって認知してもらえばいいんだろうか?

自己表現のプロってどうやって認知してもらえばいいんだろうか?いつも家から出てこず、引きこもっているイメージのアーティストですが、昨今は社会で活動するアーティストがいっぱいいます。日本でもすごい増えていますね。ただ一般の方が抱くアーティストのイメージは根強くベレー帽をかぶっている気がしてます。アーティスト側の多くは今までの歴史を積み上げ思想家にまで達しながら、モノまで発表して経済的にも自立をしようとしています。それなのに一般の方がベレー帽のイメージで話かけるものだから、コミュニケーションの破綻が生じてしまうこともしばしば。巨大なアート市場が外国にあるので、日本社会では認知されづらいものわかるのですが、このズレがどうにかならないものか?と時々考えます。

好きな絵を描いてもいいと言ったときのズレ

クライアント側:スマホケースを作りたいと思った。でも普通のデザインではなくて、面白いのがいいからアーティストに頼もうと思った。アーティストとの打ち合わせで絵を依頼。好きな絵をなんでもかいていいと伝える。依頼費用5000円。もしくは売れた分から取り分を渡す。
アーティスト側:スマホの絵柄の依頼を受ける。一般的に面白い絵というのがどういうものか調べてクライアント側のことを考えて作るため自己表現はなるべく抑える。費用は1枚10万円と言いたいがサブカル業界なので相手の予算に合わせる。

アーティストはなるべく自己表現を抑えようしていますが、クライアントは相手を尊重したい気持ちで表現をしてほしいと言います。この例では自己表現というもののとらえ方が違うので熱量の差が生まれ、クライアントは「このアーティストさんはこの企画に興味ないなー」って思い始めます。アーティストは普段ハイカルチャーを相手にしてますので、費用も含めてちょっと冷めながらも生活のため技術提供と割り切ってます。

アーティストにとって「好きに自己表現していい」となるとTPOなんて関係ないので、「それあかんやつ!」を連発することになります。人によっては性器ばっかり描くかもしれませんし、デザイン的に全然イケてないものを作る人もいます。トレンドなんて興味ない。どんなもの作ってもアーティストには問題ないのです。でもアーティスト側もクライアント事情を知っているので、合わせきます。会社とのやりとりに慣れているアーティストであればあるほど冷静です。

一緒にモノづくりしようといったときのズレ

なぜかコラボがうまくいかないことがないでしょうか???ここにもずれが生じております。デザイナーとアーティストのコラボレーションはうまくいきそうで行きません。ここには仕事の捉え方及び個人制作のずれがあります。

デザイナーはこんな感じじゃないでしょうか?

個人制作および作品→自分自身の作品。美意識の追求。歴史的背景を踏まえた上で今何をするかを提示。あわよくば社会で認知されてほしい。
仕事→クライアントからの頼まれ仕事。その人の満足のしてもらえる結果を出す。
見せたい対象→アートディレクター。これをみたい人たち大多数。

それに対しアーティストはこんな感じじゃないでしょうか?


作品→自分史の制作。美術史に対するアンチテーゼ。思想や哲学的な理論の更新。自分がよければそれでいい。
仕事→作品作りで培った技術の提供。自己表現は全くしないし出来ない。
見せたい対象→コレクター、パトロン、あこがれの作家

デザイナーとアーティストの垣根がなくなってきているので、これは極端と思ってもらってもいいと思いますが、垣根が駄々崩れの私でも作品制作の根底にはやっぱりあります。アーティスト側は作品を見せたい対象がとてもワンポイント。対しデザイナー側はあるカテゴリーの大人数となりますからアートディレクターなど社会に影響力のある人に見せたいでしょう。コラボの時はデザイナーは自分のアイデアをブラッシュアップしてより強力なメッセージを届けたい人に届くことを目指し、新鮮なアイデアをアーティストに求めますが、アーティストは顧客が”その人”でしかないため、変に斬新なアイデアを言って狭まります。その結果お互いがお互いを「使えないなあ」と思う。なんだか似てるのに微妙なズレを感じるときはこんな違いがあるんじゃないかなあと思います。

あとモチーフ選びに関してもずれます。デザイン業界では盗用というのがしばしば問題になりますね。でもイギリスでは芸術がアート。応用芸術がデザインです。つまりアートを応用するのがデザインなので、アートをぱくっちゃってオッケー。反対にアートはダメです。もし何かを借りるならオマージュとしての意味がなければならないです。こんなところでもコラボにずれが生じます。デザイナーの「これかわいい~」に対し思想的意味を問いただすのがアーティストです。あー、やりにくいですね(笑)

私の経験

私は強力なメッセージを持っている人からアート作品のコラボを依頼されたことがあります。その人はこうがいいかな?ああがいいかな?こうすると伝わるかなあ?と一生懸命作品の造形アイデアを練っていらっしゃいました。私からすれば、そこまでメッセージを発しているのだったらどうやったって作品になるから、と説明しましたが、納得いってもらえませんでした。しかも何を言っても私の意見なんて聞く耳がないので、私自身しんどくなっていました。

問題解決のためのシンボルを作ろうとする人に、今出てくるイメージを吐き出せという指示はずれています。そもそも日本においてはエンタメと広告とファッションとデザイン、それぞれのいうアートが違いますし、アーティストにとってはアートとARTも別物です。一つの言葉に多様な意味があるというもとても面白いことですが、それでは求められるものも、提供する側をずれまくります。でもこれは私にとってとてもいい経験になりました。

ただ会計士とか弁護士とかのようにわかりやすければいいのになとおもいつつも、「~を作る人」といわれるのを避けるのもアーティスト。自由であることが義務であるため、素直に受け取ることもできない。

天邪鬼だわーってことで文章を〆ます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?