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九谷焼き研修 at secca.inc 前編

私は現代美術家です。ドローイングと絵画を20年前から描いています。東京にきた5年前からデジタル技術で作家のバックアップを職業としてきたこともあり、結果アナログとデジタル境域を行き来できるようになりました。そういうのっていわゆる

器用貧乏?

そうかも!

でも「何でもできる」ことってすごくない!?

というわけで、デジタルアルティザンというコミュニティーに参加しながらいろいろ挑戦させてもらっています。今回は金沢の企業さんのsecca.incで九谷焼研修を受けてきました。同時に工芸の街、金沢をリサーチ。面白い土地柄も見えてきました。


九谷焼って?

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九谷焼は石川県の伝統的な工芸技術です。特徴は生地に「呉須(ごす)」とよばれる黒色で線描き(骨描き)し、「五彩」とよばれる、赤・黄・緑・紫・紺青の5色での絵の具を厚く盛り上げて塗る彩法です。九谷焼の生地は灰色なのが特徴です。その昔この色が美しくないという理由で、生地の色が見えなくなるまで絵をびっしり描くようになったとのこと。今では手描きに加え、印刷したシールタイプの絵付け方法もあり、ワークショップなど盛んです。

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secca.incとは?

金沢にある企業secca.incは長く受け継がれてきた伝統技術から、3Dプリンターなどの最先端のテクノロジーまで、さまざまな技術を掛け合わせ、最適なカタチを実現する職人集団です。今回はsecca.incさん、また絵師の茉莉さんにお世話になりました。

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1Day:材料買出しと準備

研修は4日のみ。1日目は買出しのため九谷陶芸村へ!昔からの分業制が残っているようで、生地屋、釉薬屋、絵付け屋といったお店がこの村にあります。
こちらの記事で紹介されている生地屋さん「木田製陶所」にもお邪魔させていただきました。とても腕がいいとのこと。

生地屋さんではいろいろな生地が売っており、買い付けに行きます。生地屋さんで売っている生地は、どこかに頼まれて作っているものもあるので、買えるか買えないか、店主にきいてから購入します。だめなら「止め」といわれます。絵付けしたいなと思ったものはだいたい「止め」でした。いつか私も生地から作りたいです。


生活に密着した作品作りは工芸の素敵なところ。骨壷を製作されていました。医学の発達で死や病を感じずに生きれるようになった現代において、骨壷はどういう意味を持つのか。私の関心ごとのひとつになりました。

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生地を購入後、釉薬屋さんへ。釉薬は焼く前と後ではぜんぜん違う色をしています。今回選んだ色は有鉛タイプ。つまり鉛が入っています。絵具でのいい色を出すものはだいたい毒薬が入ってるんですが、発色が良い。今回の絵付けは飾り用のみですので、有鉛タイプを選びました。釉薬を窯で焼いてあるので、お酒を飲むだけなら鉛が体に入ることはないらしいですが、酢の物を皿にのせると溶け出すとか。さらに1日置いておくと絵がなくなるらしいです。鉛が皿から溶け出すものを皿に乗せない。これが九谷焼の扱い方のようです。今では日常使いするタイプの九谷焼には無鉛タイプを使うみたいです。

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釉薬を入れている姿をパチリ。にやける店主さん。

九谷焼き講師吉村茉莉さん

今回教えてもらった茉莉さんは赤絵付け流派のホープ。細密な図はもちろん、デザインセンスがピカイチ。2人の赤ちゃんのママです。

九谷焼きの絵付けスタイルは大きく分けて青手、五彩手、赤絵の3つ。

特徴
青手:全体を彩る"塗り埋め"ならではの鮮やかな発色と、濃厚な色づかいから生み出される大胆なデザイン
五彩手 :屏風や掛軸から器へ抜け出してきたかのような絵画を描いた、熟練された絵付けの筆づかい
赤絵:職人の高い技術が要求される「細描」の緻密な絵付けと、金の飾り付けによる、絵柄と色の華やかな取り合わせ
詳しくはこちら

そして茉莉さんの作品

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何たる繊細か!すぐにこれ描きたい!
と思ってしまいましたけど、そうはいきません。筆さばきの訓練がいるのはもちろん、作るのには慣れた方でも1ヶ月かかるとか。今回は4日しかないので、私のオリジナルの図で作ることにしました。

釉薬準備

さて買い出しから帰って、一番最初に作るのは自分用の色見本です。和絵の具+でんぷんノリをすりガラスの上ですりすりしながら絵の具を作ります。茉莉先生の作り方を見本に、買った色全部練り上げました。なかなか大変で、色見本を作るだけで1日目は終了しました。

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最初に呉須と呼ばれる釉薬で骨描をします。色名と絵を描いて、カラーを乗せ、焼いたらどう見えるかを確認します。チョコレートはカラー名です。今回使った絵の具は伝統的な有鉛の和絵の具なんですが、名前はポップ。

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和絵の具は焼く前はこのように不透明なペールカラー。塗り方にも特徴があります。呉須に筆が付かないように浮かせた状態で塗ります。日本画をされている方はイメージできると思います。詳しくは後編で。

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乾燥後、釜に入れます。焼き時間は8時間程度。その後冷めるのを待つので12時間ほどかかります。焼けた後急に釜のふたを開けて冷却すると割れちゃうようです。

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電気釜に入った。お皿。

そして焼きあがったのがこちらですー!すごい呉須 がにじんでいる。。。最初はそんなもんらしいですが、ちょっぴりショック。でもなんか焼き物って不思議なことに失敗も愛せます。

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後編は本制作に入ります。短期滞在ですしとにかく時間との勝負です!

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