何もしないことの効用
最近はなんでもタイパ、コスパが良いことが重視され、効率の悪いことはしないでおこうという風潮があるようだが、今日はその対極にある何もしないことの効用について書いてみたい。
実は私もいかに時間を有効に使うかということに気を取られ、近年何もしないでぼーっとする時間というのはどんどん減ってきたような気がする。
なんかせわしないというか、世の中こんなに便利になって家事でもなんでも簡単にできるようになって、自由な時間が以前より増えているはずなのにその実感がない。
そんな時古い本を整理していて、故渡部昇一氏の「クオリティライフの発想」という本が目について、これはいい本だった覚えがあるので読み返してみた。
彼は、知性にはインテレクトとインテリジェンスの2種類あり、学校の勉強や仕事が良くできるのはインテリジェンス(知能)、もっと深い洞察力というか生活の知恵がインテレクトだという。
インテリジェンスは読書や勉強で伸ばすことができるが、インテレクトはどうか?
それを伸ばすのが、何もせずにぼーっとする時間だというのだ。
渡辺氏も自分の母親の例などをあげているが、確かにあまり正式な教育は受けていないにもかかわらずとても賢い人たちがいる。
特に勉強しているわけではないが、意見を求めると、核心をついたとても深い一言が返ってくる。
彼らに共通するのは、ウイスキーをちびりちびりと飲みながら、あるいは編み物や繕い物などしながら色々なことをつれづれと深く考える習慣があることだ。
考えるといっても、あーでもない、こうでもないと試行錯誤をするというよりは、静かにしていると自然にインスピレーションが湧いてくるというたぐいのものだ。
試しに30分ほど何もせずにベランダでただぼーっと庭を眺めていると、確かに忙しく活動していると気が付かなかったことにふと気が付いたり、宇宙や別の世界に思いをはせたり、なにか普段の生活とは違う思いが湧いてくる。
寝る前にも、静かな音楽をかけてしばらく何を考えるでもなく座っていると、忘れていた遠い昔の一コマがふと蘇ってきたりする。
若いころはただ前だけを見て生きてきたが、この歳になると今までの事を振り返って想い出に浸るのも良いものだと思う。
どんな平凡な人生でも、じっと座っていると色々あったなあと気づかされるはずだ。
AIが発達して、色々な事が人間よりはるかに速く出来るようになった今だからこそ、これからはインテレクトを磨く事が大切ではないだろうか。
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