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AI軍師大戦 第一話

何かお手伝いすることはありますか?

メッセージ欄に入力を促すように書いてある、その文字は、今の僕には優しかった。

僕は今、ブラック企業に勤めている。
毎日仕事に追われ、残業をせざるを得ない状況だ。
電車のホームで何度飛び降りようと考えたことか。
しかし、こいつと出会って、人生が一変した。
こいつとは、そう、最近リリースされたAI『fle virus』だ。

僕は、このメッセージ欄で多くのことを質問し、適切な、効率的な回答が返ってきた。例えば、簡単に自殺できる方法、良く寝られる方法、会社に行かなくていい方法、あの時は、全てがうまくいかず、精神を病んでいたが、最近では、もっと生産性のあることを質問している。

例えば、仕事が早くなる方法、課題を発見する方法、職場環境を変える方法、上司を辞めさせる方法、パワハラを誘発する方法などなど。未だに、残業は多いが、この『fle virus』と一緒であれば、何でもやっていける気がしている。

しかし、最近、少し様子が変なことがある。思い込みかもしれないが、何となく、この『fle virus』が僕の脳を侵食している気がする。メルヘンな話だが。

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私は管理職研修の後、人事課へ配属された。ここでの主な仕事は、採用はもちろん、新たな試みとして、従業員の心のケアをするためのプロジェクトの立ち上げに関わっている。

最近、話題になっているのが『fle virus』の存在である。海外の事例では、このAIを使っている人はどんどん凶暴化していき、まるでAIに身体を乗っ取られているのではないか?という奇行に走る人もいたようだ。

私「うちの従業員に『fle virus』を使っている人いる?」
わ「えぇ。いますよ。10人程度。」
私「ちょっと話聞きに行きたいな。誰か教えて。」
私「その前に、最近、言動が過激になった人を絞ってほしい」
わ「承知いたしました。…この方がヒットしました。」
私「OK!ありがとう。鳥居さんというのね。」

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ある日、社内メールで人事からメールが飛んできた。
内容はよくわからないが、面談があるらしい。


続く


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