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「朝活」に思うこと

【流行の「朝活」は健康に悪い?】
最近のClubhouseには朝6時などの早い時間に「朝活やってます」などの部屋がいくつも出来ている。いかにも意識高い系ビジネスマンの最近の動きではあるんだが、夜遅くまでスマホを覗く生活が普通である現代の学生やビジネスマンは、大事な睡眠時間を減らすことになりかねないので、時々やるぶんには気持ちがいいものの、毎日はやらないほうがいいだろう。かく言う私も、30歳代のとき、朝早くからの有名経営者のホテルなどで開かれる朝食会に呼ばれて、前日の夜遅くまでの企画書作成作業の疲れを引きずりながら眠い目をこすって出たことがあった。「こりゃ続けられないなぁ」というのが感想ではあったが。

【「朝活」に漂う「残念感」】
「朝活」は、「成功して金持ちになっているビジネスマンを真似て」「成功したビジネスマンは朝早く会議とか仕事をしている」のを見て、それをなんの根拠も考えもなく真似ている、という点において、頭脳明晰なエリートビジネスマンのやることじゃないんじゃないの?という「残念感」が漂う。個人的にはそう思うが、それが好きな人もいるんじゃないかと、若い経営者やその志を持った方の行く末を案じてしまう。いや、健康やひいては命を心配してしまう。

【「朝活」はなぜ始まったか】
実は「成功したビジネスマン」は大体成功までには様々な苦労を重ね、紆余曲折を経てきており、従って通常は「おじいちゃん(高齢者)」「おばあちゃん(やはり高齢者)」であることが普通である。人間は年を取ると、朝早く起きるように生理的なものが変わる。だから「成功者」の多くは(成功者に限らず)朝早く起きて、手持ち無沙汰に仕事を始めたり、部下の若い人たちを朝早くから呼んで、部下の迷惑も寝不足も省みず、忙しくなる前の時間に一緒に、残業代払わず、朝食に誘ったりするのだ。「成功者」のおじいちゃんは「朝活」をして、若い部下の眠くて辛い時間に呼び出して、それでも来る部下の忠誠心を試すなども考え、朝の静かな時間に「いい気持ち」になる。それが「朝活」の始まりである。イケイケの(←古くてごめん)昭和の高度経済成長期の、それこそ寝ていても儲かった時代ならともかく、令和でコロナでワークライフバランスの言われる現代にあっては、ある意味ホコリのうず高く積もったおじいちゃんたちの、若い人たちの健康を無視した、縄文時代さながらの「習慣」が今も生きていることに驚きを隠せない。それが「朝活」である。現代の若いビジネスマンは真似していいことないと思うんだが。

【そんな朝活でも若者はついてきたのはなぜか】
それでも、かなり若い人には「無理」を強いる「朝活」でも、高度経済成長期は若い人にとっても意味があった。会社や組織に長くいれば仕事の遂行能力の成長は少々であっても(ときには全くなくても)、年功序列で年々給与も地位も上がり、その会社に居続ける意味があった。だから上司の言うことに従っていれば、それに多少の無理があったとしても、「朝活」をいう無理は本人の将来のため、という意味が見いだせたのだ。「今は大変でも必ず将来は良くなる」だったのだから、「朝活」という「無理」を若い人間も受け入れた。9時から5時までの就業時間外の「タダ働き」にも、それなりの見返りが将来ある、と思えたからだ。そして、その場に平社員の若い人がいれば、社長などの地位にある人に顔を覚えてもらえて、他の社員よりも出世が早かったりした、なんてこともあったわけだ。

【「朝活」はほどほどに】
人間は年を取る。若い人と高齢者の生理は違う。睡眠はしっかり取るのが健康に重要なことと言われている。だから「朝活は控えめに」が、正解ではないだろうか?それでも朝活に呼ばれてどうしても「業務として」行かなければならないときは、前夜にはさっさとスマホを横に置いて早めに寝て、睡眠時間をちゃんと確保するのがいいと思う。

【それでも朝早くに】
私のことではないが、身近にいた某方に聞いた話だ。

彼は今は亡き某有名経営者に相談事をしたところ、某日の朝6時に呼ばれ、その時間に会社の会長室に行った。その方は、冬の寒いまだ暖房がきいていない部屋で厚着でいて、ストーブと、炭に火が入ったコンロがあり、その上でメザシを焼いていたそうで、部屋にはメザシの焼いた匂いと煙が充満していた。「やぁ、XXくん。食べ給え」と言われ、出してくれたお茶と一緒にメザシを食べて世間話をした、とのことだ。相談事は結局その場では話されず、終わったらしい。

昭和の時代なら、ときの流れもこんなものだった、という、のんびりした「朝活エピソード」ではあるが、今であれば「あのジジイ、朝早くから呼び出しやがって、なんも解決してくれない」で、その話がFacebookなどで拡散され、ジジイ、いや、某有名経営者の評判を落とすだけだったかもしれない。いや、その前に火災報知器が作動して朝から警備員さんたちが大変かもしれない。今はメザシじゃなくてコンビニの三角形のサンドイッチだな。なんか昭和の雰囲気はないな。

【睡眠時間を取ろう】
十分な良質の睡眠は健康の元である。昭和の高度経済成長期ではない時代の「朝活」では、成功する確率は上がらない。たとえ成功したとしても身体を壊して引退したらまずいのは言うまでもない。現代の「朝活」は、自分が成功に向かっている雰囲気に酔うための、カッコ付けだけの「苦行」である。

「朝活」はほどほどに。

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