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米大統領選はバイデンの勝利!クルドの運命や如何に?

全世界がその結果に注目したアメリカ大統領選。郵便投票の集計等に時間がかかり投票から4日後の8日やっと大勢が決しました。民主党のバイデン・ハリスの勝利です。トランプは持ちネタの「お前はクビだ!」を国民から自らに突き付けられる結果となりました。トランプは票の集計中から不正があるだの根拠のない言いがかりをつけ、法廷闘争も辞さないと息巻いています。始めから負けることを見越して悪あがきの準備をしていたように見えます。極右武装勢力らは当然バイデンの勝利を認めない様子で、最悪武力衝突に至る混乱が懸念されます。

我が国首相の菅氏含め世界各国の首脳たちは、やっと悪夢が終わったとばかりにバイデン・ハリスに祝辞を送りました。クルドの大物も以下のようにバイデン当選を祝福しています。

当方は以前、バイデン大統領誕生を予期しつつ(トランプが再選された場合の予防線も張りつつ)、以下のように書きました。

絶対的な否定か盲目的な支持に分かれがちなトランプですが、当方は彼が就任から暫くはクルド人に貢献したことは評価してます。オバマ時代後半よりアメリカがクルド人をイラク・シリア平定に向けたパートナーにしていくという方向性ができあがっていましたが、トランプ政権はさらにクルド人支援を深化させました。ユーフラテス川西岸の要衝マンビジュの米軍部隊はトルコとその傘下の傭兵の前に立ちはだかり、クルド人に向けた武器弾薬、補給物資を満載したトラックの往来がシリアの情報サイトに掲載されない日はない程でした。トランプの資質というよりもマクマスターやマティスといった優秀な幕僚に仕事を任せた結果です。マティスはトランプが繰り返し主張した米軍のシリア撤退案を一貫して批判してきました。2018年には、トルコで拘束されたブランソン牧師の解放を要求し経済制裁を課しました。その結果、トルコリラを暴落させ、アメリカが本気になればトルコ経済をいつでも破壊できる力があることをエルドアンに見せつけました。現在のトルコリラのレートは当時の水準から大きく回復していません。

マクガーク(イスラム国問題担当特別大使)やマティスが仕事をできるようにトランプがただ軽い神輿であればよかったのですが、トランプは時に苦言を呈すこれらの人材を疎ましく思い、有能な人物は次々政権から去ることになりました。2019年10月、トランプは選挙戦当時から主張していたシリアからの米軍撤退に着手します。同月、トルコはクルド人が統治する北シリアへの侵略を開始しました。この最悪の事態に至り、クルド人はトランプがクルディスタンをトルコに売ったと非難一色になっていきました。

NBCの調査報道記事によれば、エルドアン政権はトランプを取り込むためにかなりのロビー活動をしていたようです。その甲斐があってかエルドアンはトランプの「友達」に昇格しました。

最もプーチンに対する「偉大な指導者」、金正恩への「恋に落ちた」といった独裁者たちへの賛美に比べれば営業トーク感があります。

クルド人も「お前はクビだ!」とトランプに突きつけたい気持ちであったでしょう。Twitter上で「アメリカ大統領 バイデン」とクルド語で検索をかけると、結果は概ね「おめでとう」といったツイートで占められています。一部抜粋してみます。

「ジョー・バイデンがアメリカ大統領になった。おめでとう。彼の勝利がクルドとクルディスタンをより良くすることを願う!」

「ジョー・バイデンがアメリカの新大統領になった。アメリカと世界、そして我が民族にとって良い結果となることを願う。トランプ大統領が勝利すればよろしくない指導者たちに力を与えることになる」

クルド人もバイデンに投票したアメリカ国民と同じく、彼を積極的に支持するというよりもトランプ政権が終わることを歓迎しているように見受けられます。バイデンは良くも悪くも良識派という枠内を超えることはないでしょう。アメリカの良識は反中国と並んで、反トルコにも傾いています。そして自由と民主主義のために戦うクルド人への支持は高まっています。アメリカは既にクルドのみならず、ギリシャ等トルコと対峙する国への支援も強化しています。同盟国のならず者国家との対峙は、加齢による衰えが目立つバイデンには荷が重いかもしれませんが、働き盛りのカマラ・ハリスならいい仕事をしてくれるかもしれません。少なくともトランプのように気まぐれな政策転換がなくなることは確実と言えます。

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