見出し画像

残響と残像への愛

現にそこにあるものと
失われたものとでは
どちらが愛しく
思えるのだろうか

往年の名歌手なら
今のライブで聴くしわがれた声と
過去の録音で聴く若い頃の美声とでは
どちらを愛でるべきなのか

いや今そこにいる人の
愛しい声や容姿にも
わずかながらの時間差と距離があり
それが愛を生み出しているのではないか

私は残響と
残像を愛す
いずれ会える人より
もう会えない人を愛す

それゆえ私は
自分が愛されることも
期待しない
現時点では

私は残響と
残像を託す
常にそのことを考えて
振る舞い続ける

それでも気になるのは
失われた人々が
今どこで何をしているかだ
彼らは失われてなどいないのだから

私は残響と
残像へ問う
すると彼らは答えてくれる
しばしの不在だと

残響と残像をよろしくと

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?