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ライ様

ライ様、来たと、おばあちゃんが言う
ピカとドン
ピカと光ると
耳を塞ぎ
ドンと鳴ると
目をつむる
ああ、あさましき
おさなごよ
何を恐れる
ライ様はな
雨の恵みをもたらし
涼ももたらす
神鳴るゆえに
かみなりと言うぞ
天を統べるものなるぞ

と言い終わるか終わらないうちに
ピカとドンが同時に発生
おばあちゃんは気を失う

はい、どうも、こんにちは
庭に雷の子が落ちてきた
おへそを取りに来ましたよ
ぽんぽこりんのお腹に
でべそのそこの子
おへそを取られるか
それとも僕の代わりに
雷の子になるか
できたら、雷の子になってほしいな
そしたら、僕がここの子になれるから
君は別の子の家に落ちて
そこの家の子になればいいよ

僕は機転を利かせてこう言った
おへその代わりにもっとおいしい
お餅をあげるから
どうぞ許して
取引の場所は近くの雷電神社
毎日餅を供えて
秋になる頃にやっと雷の子に帰ってもらった

ライ様
自分の子のしつけが
なっとらんよ
餅で取り引きができれば
運が良い方
おかげでこの地方は
雷の子ばかりになった
ほら、あそこの家の子も
あそこの家の子も
みんな雷の子だ
太鼓腹を叩いている

おさなごよ、覚えておいで
くわばら、くわばら
この呪文を唱えたものだけが
ライ様を免れる
本当だよ
僕は後でライ様について調べたんだ

でも、いっそ
この地方で生きていくためには
雷の子になって
餅をたらふく食べて
太鼓腹を叩いていた方が
幸せだったかもね
僕はまっぴらごめんだけどね

これは僕が小さな頃に
体験した本当の話

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