アトミズムの友だち

人嫌いの友だちがいた
彼は僕を友だちだと思っていない
しかし僕は
彼が人嫌いだという一点で
信用できる
人嫌いなら信用できる

よく「私は人間が好きです」
という人がいる
そんな人とは
仲良くなれないような気がする

なぜならこの世界はどうも
フレンドリーではないように思えるからだ
フレンドリーではないこの世界で
人が好きだと言える人は
嘘をついているか
自分をごまかしているか
誰かをいじめることで結束しているかだ

人嫌いの友だちが
中途半端なやつでなければいいのだが
どうせならいっそ
アトミズムの友だちならいいのだが

本当は人が好きで
でも、人に溶け込めないから
人嫌いの振りをしているだけだったら
幻滅この上ない

この世界がフレンドリーではないと
嘆いているこの僕こそが
実は中途半端なやつなのだが

でも、アトミズムの友だちなら違った考えがあるはずだ
すべては原子に分解できる
人間の身体だけでなく
人間関係も
人間の一瞬一瞬の思考ですら
すべては原子のなせる技

そんなアトミズムの友だちに
僕という人間も原子の集まりだと見抜かれて
僕が友だちになりたいと思う気持ちも
所詮は幻だと見抜かれて
僕はそれに完全に同意して
ついには彼と
同じ原子と原子として握手して
アトミストであることを誓い合うのだ

そして彼にこう言わせよう
俺は昔いちどだけ真のアトミストに会った
だがそんなやつと友だちになれるわけがない

おお、友よ…

Picture: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Democritus2.jpg