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夢の島

夢の島に行ったかい?
そこはかつて海だった
遠浅の海は埋め立てられ
南国リゾートへ

僕はそこへゴミを捨てにいった
来る日も来る日も
ゴミを捨てた
生ゴミもそのまま捨てた

やがて無数のハエの楽園となった
それでもゴミを捨てた
それが僕の仕事だった
ハエは仕事帰りの僕の部屋にもついてきた

ハエ叩きは確かにハエを叩くのに便利だったが
ハエを根絶することはできなかった
ハエを根絶するためには
ゴミを根絶しなければならなかった

僕は上司の命令でゴミを燃やした
ゴミは捨てるものではなく燃やすもの
人間の遺体だって風葬も土葬もやめて
今どきはみんな火葬だ

さて残ったのはプラスティックだ
いつしか僕らは水を飲むのにさえ
プラスティックを使うようになった
そうしなければならないかのように仕組まれた

万事がそうで
企業はプラスティックを作っては捨てさせる
それが金儲けなら
ブルシット・ジョブだ

いま太平洋では新たな夢の島が回遊している
GPGP(じーぴーじーぴー)という
Great Pacific Garbage Patchの略だ
強いて訳すなら「太平洋巨大ゴミ海域」だ

それは日本列島の大きさを
優に超える
僕らはゴミに負けた
完敗だ

そもそもゴミとは何か
哲学的な問題だ
主観がゴミと決めつける
ゴミになる前は有用な物質だった

僕らが使った後
それは無用になるのだ
さてそこまで来て僕は気づいた
僕も今や無用のゴミじゃないかと

誰か僕を夢の島に連れて行ってくれ
もしハエがたかったら燃やしてくれ
厄介なのはマイクロ・プラスティック
僕の身体に染み込んでいる

やはり僕の身体を
燃やすのは良くない
悪いガスが発生する
夢の島にそうっと放置してくれ

そして僕をゴミ扱いした君も
夢の島へ
ようこそここへ
いい夢を見ましょう!

Picture generated by Stable Diffusion Online

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