見出し画像

ハリウッド製の変な日本を楽むために 〜『ブレッド・トレイン』の日本はデタラメじゃない〜

日本の小説が原作で、日本が舞台なのに、キャストの9割がアメリカ人のハリウッド映画。
『ブレッド・トレイン』を観ましたよ。
弾丸特急ゆかり号の中で起きる殺し屋同士のドタバタアクションコメディ。

ほんまにコメディ色が強くって終始ニヤニヤ、気づけば爆笑しておりました。
え、弾丸特急ゆかり号なんて聞いたことがないって?
そうなんです。この映画、現実の日本じゃなくってハリウッドが描く変な日本が舞台なんです。

原作小説の舞台は東北新幹線。東京―仙台間で日本人の殺し屋同士がドタバタします。
映画ではそれが東京―京都間になっている。だからといって東海道新幹線のルートでもなさそう。
弾丸特急はが在来線みたいに街中を疾走するし、どの駅も見たことないデザイン。

これがね、現実の駅よりもエキゾチックで格好いいんですわ。
僕は京都出身なんですけれども、本物の京都駅よりも弾丸特急の京都駅の方がはるかに京都らしいデザインに見えました。
関西の駅なら他に滋賀の米原駅も重要シーンに使われて、超クールでしたよ。

でも、これか受け入れられない日本人は一定数いるみたいで。
昔からハリウッド映画にでてくる謎の日本描写。日本人が見れば違和感バリバリ。
こういう映画が公開されるたびに、日本のことをちゃんと調べて作って欲しいって声はある。

これには思うことが2点あって。
ひとつは日本人が外国映画の日本描写に違和感を抱くのと同様に、日本映画が描く外国と外国人も、当の国の人が見れば違和感バリバリに違いないってこと。
お互い様です。

もうひとつはこの『ブレッド・トレイン』についてだけれど、おそらくわざと架空の変な日本を創作しているということ。
そもそも特急の名前や駅のデザインなんて、調べればすぐに本物は見つかる。
なのにあえて新幹線のぞみじゃなくって、弾丸特急ゆかり。JRじゃなくってNSL(ニッポンスピードラインかな?)。

東京を夜に出発して京都に到着するのは翌朝やし。おそい!夜行バスみたい。
富士山は京都近くにあって、特急内の売り子さんが金髪で、ゆるキャラまで添乗してる。
あえてズラしてます。創作してますってという明確なサイン。

映画の作り手は調べて正解を知った上でワザとやってると決めつけていいんじゃないか。
なぜなら日本の特急の中でアメリカ、ロシア、そのほかの国の殺し屋たちがドタバタする現実離れした話だから。
それに合わせて舞台も現実離れしている方がしっくりくるんですよ。

当たり前のことだけど、映画の作り手は観客の何百倍も調べて考えて作っている。
観客が見ているのは無限の可能性の中の一つの結果に過ぎなくて、観客が感じる程度のことは全て、作り手がはるか以前に通過済み。
デタラメな日本じゃない、創作された日本として観ればめっちゃ面白い。

スキ「♡」をありがとうございます! 「サポート」はささやかな幸せに使わせてもらいます♪