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「ナウシカは漫画の方が凄いから」なんてこと言わずに映画館へ

ジブリ4作品が劇場公開中。もののけ姫から1日空けて『風の谷のナウシカ』を観てきました。
いやぁ、凄い。もののけ同様、何度も見た映画だけれど劇場に観に行ってよかったです。ナウシカの映画を語ると、ちょっとうるさ方のファンやオタクはおっしゃいます。「ナウシカは漫画の方が凄い」って。
そこでやめときゃいいのに「アニメのナウシカは浅い」なんてことまでおっしゃいます。

おっしゃ、その喧嘩(?)買いましょうじゃあありませんか。ナウシカの漫画が凄いのは知ってます。原作7巻持ってます。
それでも、僕はアニメの方が好きです。好きな理由は凄いからです。ある意味、漫画版よりも。
漫画版のナウシカは、いつ終わるのか決まっていませんでした。つまり、いつまでも書けるし書きたいだけ書けるということです。

でも映画は2時間で語り尽くさなければいけません。
ナウシカ製作当時、語りきれなければ続編を作りゃあいいやみたいな甘い選択肢は宮崎駿には与えられていませんでした。
『カリオストロの城』が興行的に大失敗した次の背水の陣。あとがない状況。

漫画を歴史とすると、映画は歴史の一部分を切り取り「伝説」として再構成したものです。ナウシカは伝説の名作です!みたいなふわっとした意味じゃないですよ。
宮崎駿は歴史を元に人から人へ語り継がれる「伝説」、かつてナウシカという女性がいて、風の谷を救ったんだよという「伝説」として映画を製作したんです。
ナウシカ原作漫画はかなり読みにくい。なぜなら歴史の教科書、参考書だから。でもアニメ映画は見やすい。理由はここにあります。

よくあるじゃないですか。漫画の映画化、小説の映画化。その多くは原作ファンから酷評されます。
酷評の理由で多いのが「ここが、あそこが描かれていない」という原作と比べて足りない部分。
でもそれは仕方がない。何巻でも描ける漫画や10万字使える小説と比べて、映画の情報量は少なくなりますよそりゃ。

でも宮崎駿はしっかりと情報量の補完をしています。その一例がオープニングのタペストリーの絵です。そこにはそれまでの人類の歴史がしっかりと描かれています。
文明が発達し、星まで達した人類。
しかし争いは絶えず、巨神兵を作って文明はおろか森まで焼き尽くし、怒った自然に追い詰められる歴史がすごい密度で。

このタペストリーを隅々までじっくりと見ることができただけでも、大スクリーンに行った甲斐がありました。
そしてオープニング後の映像、アクション、音響、メカ、声優の芝居も全部すごい。
何がすごいって公開されてもう40年近くたっているという事実を忘れてしまうことがです。

もいっこだけ、漫画支持者の方からの多い意見「マンガに比べてラストが甘い」。
いいじゃあありませんか。あの甘いラストの映画じゃなければナウシカはヒットしなかった。映画がヒットしなければ、当時連載途中だった漫画版も完結まで連載を続けられなかったかもしれません。
2時間にぎゅっと詰め込んだナウシカから、宮崎駿の映画監督としての凄みを知りましょう。さ、映画館へ。



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