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ティーン少女バディから学ぶ人の相互作用

『成瀬は天下を取りにいく』である。
長い移動時間になんとなくオーディブルで聴き始めたら面白すぎた。
最後まで聞く前に続編と合わせて書籍をポチった。
 
この小説はこんな紹介のされ方が多いようだ。
滋賀県大津市のご当地小説、町おこしの群像劇、天才少女のサクセスストーリー。
僕は『ティーン少女バディもの』と紹介する。
 
僕がバディものと認定する条件は異質な2人が行動を共にするうちに相互作用すること。
洋画バディ物のミッドナイトランもラッシュアワーもバッドボーイズも相互作用。
どっちかがどっちかに一方的に引っ張られるのではない。
 
引っ張っている側も引っ張られている側から影響を受けている。
引っ張られている側からの影響は物語の最初は目立たない。けれども物語の最後に大きなインパクトを及ぼす。
この小説には成瀬と島崎、2人の少女が登場する。
 
成瀬は天才肌の一匹狼、島崎は周りを気にする常識人。
物語の始まり、1章と2章では島崎が一方的に成瀬に引っ張られているように見える。
そう見えるには理由があって、1章2章では島崎の一人称になっているから。
 
自分がどれだけ成瀬に引っ張られているかをずっと語っているからだ。
しかし、その関係はさらにいくつかの章をはさんで最終章で逆転する。
最終章は成瀬の一人称。
 
成瀬がある出来事をきっかけに自分がどれほど島崎から影響を受けているかを気づく。
その心情が成瀬主観で描かれる。
この逆転が気持ちいい。
 
全て人は相互作用をしている。
天才が凡人を引っ張るだけじゃない。凡人が天才を引っ張ることもある。
先月アニメが公開された『ルックバック』もそんなドラマだった。
 
藤野と京本、2人の個性が相互作用する。
でも物語の着地点は『成瀬』とはずいぶん違う。
『ルックバック』では心を抉られて、『成瀬』では心を洗われた。
 
長女と友達は『ルックバック』的で、次女と友達は『成瀬』的な関係だと現実でも見てニヤニヤとするようになってしまった。
そんなアラフィフパパの視線に娘は影響を受けず無視するだろう。
父とティーン娘の人間関係だけは相互作用しません。

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