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映画館で見ている「自分」とシンクロする『ニューシネマパラダイス』は希望でしかない

『ニューシネマパラダイス』は間違いなく映画館で観るべき映画だ。
映画館で観るべき映画といえば最近では『カメラを止めるな』が思い浮かぶ。
『カメラを止めるな』は人が多く入ってる賑やかな映画館で観るべき映画だ。

でも『ニューシネマパラダイス』を観るのは賑やかな映画館でも、静かな映画館でもどちらでもいい。
最新式の巨大なシネコンでも、歴史のある小さな単館でもいい。
条件は映画館であること、それだけだ。

と、書いている僕はつい数日前に初めて『ニューシネマパラダイス』を観た。
幸運なことに『ニューシネマパラダイス』の初体験が映画館だった。
営業自粛開けの近所のシネコンの大スクリーンで、この映画を体験することができた。

220人がけのシアター内に観客は僕を含めて3人だけ。
とっても静かな環境で映画に没入することができた。
これまでニューシネマパラダイスをビデオ、DVD、オンデマンドで観てなくてよかった。

人の多い賑やかな映画館なら、映画の前半、映画黄金期の情景と自分の状況がシンクロする。
主人公の少年〜青年期だ。
人の少ない静かな映画館で観ると、映画のラストシーンと自分の状況がシンクロする。
壮年になった主人公がひとり映画館で昔の友人からの「贈り物」を知るシーンだ。

見ている自分の年齢ともシンクロする。
正直、主人公の少年時代にはキラキラした面もあるけれど、悲惨な面もある。
現代日本ならコンプラ的に一発アウト。いくらキラキラ楽しい面があろうともそれを上回る児童虐待の描写がある。

そんな少年期を乗り越えた青年期はなかなか力強い。
ここはフィクション成分が強く、甘酸っぱい青春が描かれている。
90年代の公開時にリアルタイムで観たら、僕はここにハマったかもしれない。

現在の僕は46歳。青年よりも壮年に近い。
主人公がひとり映画館で「贈り物」を噛みしめるラストシーン、僕は主人公と同じポーズ、同じ表情で画面を見ていた。
顔の前で手を合わせる。涙ぐむ。人差し指を唇に当てる。座席から背を起こす。拳を頬に当てる。ニヤリとする。

そんな百面相の自分を自覚した瞬間、ちょっと赤面した。
空いてる映画館でよかった。ほかの2人と観客とははるかに席が離れてる。
でもちょっと、同じラストシーンを見ている他の2人の表情も見たかったな。

僕は映画監督になりたかった。
学生時代に自主映画を撮ったり、小さな映画館で映写のアルバイトをしたりしていた。
でも僕は映画監督にはなれずに、テレビの仕事に就いた。

僕は今でも映画館と映画が大好きだ。
『ニューシネマパラダイス』は映画と映画館の力を信じる人のための映画。
関西なら今、箕面と宝塚で上映してます。

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