ラヴィット!出演者を独自の視点で寸評してみた(3) 〜水曜レギュラー編〜

・アンタッチャブル 柴田英嗣 (プロダクション人力舎)

 M-1グランプリ2004で優勝したアンタッチャブルのツッコミ担当。現在はコンビでの冠番組も目立つ言わずと知れた実力派のベテランだが、このコンビを語る上で外すことができないのは、およそ10年近い間コンビでの活動がなかった、俗に言う空白の期間が存在することだ。
 その活動休止の原因となったのは、柴田の私生活に関するトラブルだという。これにより柴田は一時芸能活動を休養。その復帰後はコンビではもちろんのこと、アンタッチャブル・柴田をテレビで見かける機会もかつてより大幅に減少することとなった。テレビではやや扱いづらい、いわゆるスキャンダルを持つタレントとしてその芸人人生にどことなく暗い影を落としていた。
 そんな柴田、というよりアンタッチャブルにとって転機となったのは、2019年11月29日に放送された「全力!脱力タイムズ」(フジテレビ)でのコンビ復活劇だ。その詳しい内容や経緯はあえて割愛するが、それ以降、コンビでの活動を徐々に再開。そしていまやかつての状態にほぼ完全に戻った状況にある。
 ラヴィットが始まったのは2021年3月だが、仮に番組のスタートがこれよりもう少し早ければ、柴田はレギュラーに選ばれていなかったのではないか。柴田の復活と番組の開始時期を見ると思わずそう言いたくなる。タイミング的にある種のラッキーと呼んでもいい。柴田がラヴィットのレギュラーとして選ばれたことは、彼が芸人として以前の元気な状態へと完全に戻りきったことの証。そう言い換えることもできる。
 MCである麒麟・川島明との関係性を言えば、アンタッチャブルが優勝した2004年のM-1でその最終決戦を争ったのが、南海キャンディーズ(準優勝)と麒麟(3位)だった。その時勝者となったのが柴田で、敗者となったのが川島。しかしそれから20年近くの年月を経た現在、朝の帯番組でMCを務める人物がその敗者から2人(南海キャンディーズ・山里亮太、麒麟・川島)も現れると予想した人は当時どれほどいただろうか。柴田に活動休止期間があったこともあるが、M-1における当時の勝者と敗者の関係は、少なくともこのラヴィットにおいては完全に逆転した状態にある。
 番組での柴田の役をひと言でいえば、パネラー達の兄貴分のような存在だ。木曜レギュラーのNON STYLE・石田と似たような存在とも言えるが、柴田のほうが川島より先輩なだけあって、よりその兄貴分的な要素を強く感じる。ツッコミやガヤに加え、ボケることも得意な俗に言うオールラウンダーなタイプ。活発な芸風ながら、同時にベテランらしい技巧的な持ち味も併せ持つ、MCにとっても頼りになる芸人のひとりだ。
 朝の情報番組にはあまり相応しくない、かつての取り扱いにくい感じやスキャンダラスなムードはもやは雲散霧消している。水曜レギュラーのなかでは彼が最も外せない人物だとはこちらの見解である。

・矢田亜希子(トヨタオフィス)

 昔のドラマや映画には特段詳しくないが、それでもこの方の顔と名前くらいは知っている。かつては「結婚したい女優ランキング」などでも上位に名を連ねた、いわゆる人気女優のひとりというのがこちらの主な印象だ。しかしこう言ってはなんだが、矢田亜希子さんと聞いてこちらが真っ先に想起するのは、なんというか、その少々触れづらい私生活における過去の出来事になる。その詳細について語ることは避けるが、かつての人気女優である矢田さんがこうしたバラエティ系番組のレギュラーに選ばれるのは意外だった、というのが最初に抱いた率直な感想だ。
 いわゆるお洒落系、綺麗系ママ枠というわけだが、単発の番宣ゲストならともかく、このラヴィットレギュラーでそうしたスマートなキャラクターを維持することは実際には不可能に近い。決してイジられるというわけではないが、少しお高くとまった感のあるそのキャラを、川島を含む周りの芸人たちに笑いのネタにしてもらう機会はそれなりにはある。もっと言えば、このラヴィットが始まって以降、他のバラエティ番組でもその姿を目にする機会が少し増えたとはこちらの印象だ。
 またこの文章を書いていてふと気づいたことなのだが、全曜日のレギュラーをパッと見渡しても、女優と呼ぶことができそうなのは実は矢田さんただ一人しかいない。すると途端にその存在が貴重に見えてくるから不思議だ。高貴なムードと情報番組的な要素をバランスよく持ち合わせる唯一無二の存在といえば少し大袈裟だろうか。
 いまや子を持つ母であり、ベテランとなったかつての人気女優。先述のアンタッチャブル・柴田にも言えることだが、暗い過去を微塵も感じさせないその朗らかな姿は「日本でいちばん明るい朝番組」を目指す番組のコンセプトとも合致している。お笑い要素が強いラヴィットで今後どれほど活躍できるかはわからないが、その存在感だけはこれまで十分効いている。ラヴィットの出演が、彼女の芸能活動に少なからずの好影響を与えていると考える。

・見取り図 盛山晋太郎 リリー (吉本興業)

 ラヴィットがスタートするおよそ3ヶ月前に行われたM-1グランプリ2020。そこで3位となったことで全国的なブレイクの大きなきっかけとなった見取り図だが、ラヴィットに関して言えば、そのM-1による影響は彼らだけにはとどまらない。同じラヴィットレギュラーのニューヨーク(木曜日)と東京ホテイソン(金曜日)、加えて準レギュラーではマヂカルラブリー、おいでやすこが、インディアンスらも、いわゆる2020年のM-1ファイナリスト組だ。その時のM-1決勝進出者発表会見で司会を務めた川島とは、皆それなりに関係性のある芸人とも言える。彼らのラヴィットへの抜擢が実際のところMC川島とどれほど関わっているのかは知る由もないが、彼らの芸人としてのポテンシャルがその時の川島の目に止まったことだけは間違いない。おいでやす小田をはじめとした、先述のメンバーと川島による絡みをラヴィットで見ていると思わずそう言いたくなる。
 話を見取り図の2人へと戻そう。暑苦しいツッコミ兼イジられ役(盛山)と、ローテンションのボケ役(リリー)。その番組内における役回りは彼らの漫才におけるキャラクターとほぼ完全に一致する。お笑い的にも見ていてわかりやすい、言ってみればベタな存在だ。その活躍度は決して低くないが、それはあくまでもこのラヴィット内における話。他の番組ではどうなのか、個人的に気になるのはそこだ。同じ水曜レギュラーのアンタッチャブル・柴田とは違い、見取り図はまだ評価を確定しきれてはいないコンビ、年齢的にもまだ成長する可能性が見込めるコンビになる。そうした視線を傾けると、やや物足りなく見えるというのがこちらの率直な見解だ。近い将来、千鳥やかまいたち級のレベルに達するのはやや難しそうに見える。少なくとも芸人としての格は1レベル以上違う。
 例えば明石家さんま、ダウンタウンのようなベテラン大御所芸人を10とするならば、有吉弘行、くりぃむしちゅーは9。最近の川島もこの辺りの域に近づきつつあると言えるだろう(この辺りに属する芸人は他にも何組かいる)。千鳥、かまいたち級の冠番組を多数持つ中堅コンビのレベルはそれより1歩低い8という感じだろうか(千鳥は8.5でもいいかもしれないが)。
 特別感漂うカリスマ性のある芸人となれば最低でも8前後は欲しい。そこから見取り図は1ランク落ちるというこちらの見立てが正しければ、6.5〜7レベルの芸人になる。
 もちろんひな壇側に座る芸人でもレベル7以上を示す勢いにある人はいるが、いまのところ、見取り図にそこまでの匂いは特段感じない。頑張って7.5に届くかどうかというのがこちらの見立てになる。逆に最近いいムードを感じるのは、見取り図の後輩であり、同じくラヴィットレギュラーでもあるニューヨークだ。見取り図を7とすれば、現在のニューヨークはそれより半歩高い7.5。少なくともカリスマ性という点においては見取り図を上回っているように見える。さらにもう1組、彼らの後輩で思わず名前を挙げたくなるのは、昨年行われたキングオブコント2022の準優勝コンビ、コットンだ。昨年のキングオブコント以降その露出はまさに急上昇。いまやラヴィットの準レギュラー的な存在になるに加え、今年4月からはヒルナンデス!の新レギュラーに抜擢されるなど、現在飛ぶ鳥を落とす勢いにある旬な実力派コンビだ。現時点ではまだ見取り図のほうがその格において上回るが、近々逆転が起こっても決して不思議ではない。勢いのある後輩が彼らのすぐ後ろに多く控えているところも、見取り図が安泰そうに見えない大きな理由のひとつになる。
 川島と見取り図の相性は確かにいい。ラヴィットにはとてもうまくハマっているが、それに比べると他の番組での活躍度は僕的には正直少し物足りなく見える。決して悪くはないが、絶対ではない。見取り図はこのままパネラーの域に留まるのか、それともより上のステージに進むのか。今後の3,4年が勝負所と見るが、その姿にとくと目を凝らしたい。

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