日本より確実にキツい。ポルトガル、イタリアがW杯予選で大ピンチ

 11月26日、日本時間では27日の午前1時に、W杯欧州予選プレーオフ抽選会が開催される。

 欧州予選の出場枠は13。すでに10組に分かれていた各グループの予選は終了しており、それぞれのグループ首位10ヶ国が出場を確定させている。

 セルビア、スペイン、スイス、フランス、ベルギー、デンマーク、オランダ、クロアチア、イングランド、ドイツ。すでに出場権を獲得したのはこの10ヵ国。順当と言えば順当。とはいえ、波乱もあった。W杯出場を逃せばそれこそ大失態に値する、2つの強国がプレーオフ行きを余儀なくされることになった。

 今夏のEURO2020優勝、現欧州王者のイタリアと、いまや欧州屈指のタレント軍団でもある、前回のEURO2016の覇者・ポルトガルだ。それぞれ予選の最終戦で勝てば出場が決まっていたものの、イタリアは北アイルランドに引き分け、ポルトガルはセルビアに敗戦。その結果、両国ともグループの2位に転落し、本大会へのストレートインを逃すハメになった。

 最後の望みを懸けたプレーオフに進出するのは12チーム。この12チームがA、B、Cの3グループに分かれ、準決勝、決勝と一発勝負を勝ち抜いた3チームがW杯本大会に出場できる。なお、欧州予選で成績上位の6チームはシードとなり、準決勝はホームで開催される。プレーオフ準決勝は2022年3月24日、プレーオフ決勝は同29日にそれぞれ行われる予定となっている。

 プレーオフ進出12カ国は以下の通り。

・ポット1(シード獲得)
ポルトガル、スコットランド、イタリア、ロシア、スウェーデン、ウェールズ

・ポット2
トルコ、ポーランド、北マケドニア、ウクライナ、オーストリア、チェコ

 繰り返すが、この中からW杯本大会の土を踏むことができるのは3チームのみ。他の人はどう思っているのかわからないが、僕にはとてつもなく厳しい戦いに見える。本大会へ出場させてやりたい国は、個人的には少なくとも6〜7チームはある。ここで落とすのはあまりにももったいない。

 というのも、これらのチームは全て、この夏行われたEURO2020の出場国。5ヶ月前にその戦いぶりを見たばかりの、いわば馴染みのあるチームだ。EUROの出場枠が24チームだったので、それより思いっきり少ないW杯の出場枠に、惜しくも入れなかっただけ。短期間でそのチーム力が大きく低下したわけでは全くない。むしろポルトガルやイタリアなどは、W杯に出場すればそれなりに上位進出が期待される、実力国の筆頭だ。

 だが、そんなイタリアとポルトガルが極めて危ない状況に晒されている。本大会の出場を逃す可能性が、それぞれ少なく見積もっても50%はある。組み合わせ次第では、この2カ国が潰し合う可能性もある。まさに地獄のプレーオフだ。

 しかも相手は弱小国では全くない。さらに言えば、試合はそれぞれ一発勝負だ。決して侮れないヨーロッパの中堅国相手に、イタリアとポルトガルがすんなり連勝する姿を、そう簡単に想像することは僕にはできないのだ。どのチームが相手でも、そのプレッシャーが大きいのは明らかにイタリアとポルドガル。この両チームには、それこそ計り知れない重圧が掛かっている。どちらかが敗れる可能性が60%くらいはあると思う。

 どちらも出場を逃して欲しくないチームだが、あえてどちらかを選ぶなら、ポルトガルになる。サッカー界のスーパースター、クリスティアーノ・ロナウドはもちろん、その他にも今をときめくタレントがズラリと名を連ねるからだ。ベルナルド・シウバ、ジョアン・カンセロ、ルベン・ディアス(ともにマンチェスター・シティ)、ディオゴ・ジョッタ(リバプール)、ブルーノ・フェルナンデス(マンチェスター・ユナイテッド)、ジョアン・フェリックス(アトレティコ・マドリード)、ヌーノ・メンデス、ダニーロ・ペレイラ(ともにパリ・サンジェルマン)、ラファエル・ゲレイロ(ドルトムント)など、これらの選手の名前を見るだけでもワクワクする。カタールW杯の優勝候補に挙げられてもおかしくない。いまやそれくらいの人材の宝庫でもある。このポルトガルがプレーオフで敗れれば、それこそサッカー界の大ニュース。過去最高のメンバーと言っても過言ではない今回のポルトガルにとっては、予選敗退はまさに言葉で表せないほどの悲劇に違いない。

 もう一つの強国、イタリアもピンチであることに変わりはない。何と言ってもイタリアは、前回の2018年ロシアW杯予選ですでに予選落ちを経験している。もし今回も予選で敗れることになれば、サッカー大国の名をさらに汚すことになる。EURO2020では全試合を通して、攻撃的な良いサッカーを披露。その上で見事な優勝を果たした。世界にイタリア復活を印象付けたわけだが、ここで再びその名を落とすわけにはいかない。EUROでの優勝による歓喜から、またしても大きな悲しみを味わうことになるのか。ポルトガル同様、イタリアの行方にも目を離すわけにはいかないのだ。

 その他のプレーオフを戦うチームで言えば、ポーランドも捨てがたい。今年のバロンドール候補、ロベルト・レバンドフスキの姿をW杯で見られないのは、サッカーファンとしては寂しい。前回のロシア大会では欧州予選をストレートで楽々と通過。本大会では堂々の第1シード国として出場したにも関わらず、セネガル、コロンビア相手に連敗し、3戦目を待たずしてグループリーグ敗退が決定した。最終戦となった対日本戦では、試合終盤に相手に後方で時間稼ぎのパスを回されるという、消化不良の終わり方をされた、ある種の屈辱も味わっている。ロシアの地でポーランドはその魅力を存分に発揮することかできなかった。EURO2020でも同様にグループリーグ敗退。今回こそはの思いはかなり強いはずだ。

 スウェーデンも、本大会で見てみたいチームの一つになる。前回ロシア大会では堂々のベスト8。今回も有名選手は少ないものの、大崩れしそうにない、伝統のある手堅いチームだ。スウェーデン屈指のスター、大ベテランのズラタン・イブラヒモビッチがどれほどプレーするのかはわからないが、この好チームもできれば本大会に出してあげたい。少なくとも日本よりも、だ。

 南米予選を戦うブラジルとアルゼンチンの2大強国は、すでに突破を決めている。残る強国と言えるのは、同じく南米のウルグアイとコロンビア。この2カ国も現在予選では大苦戦を強いられている。本大会出場は予断を許さない状況にある。

 今回、アジア予選で過去一番とも言えるほど苦戦を強いられている日本だが、それでも世界と比べれば、そのレベルはたかが知れている。アジア予選のレベルがいかに低いか、そして世界のレベルがいかに高いか。予選の戦いを見比べれば、それは一目瞭然になる。ハッキリ言って、アジアの枠は4.5もいらない。3.5で十分。少なくとも1枠は欧州に分けてやるべき。僕はそう思う。

 サウジアラビア、オーストラリア、オマーン、中国、ベトナム。日本とW杯出場を争うこの相手が、いかに恵まれているか。そして、そのことをどれほどの日本人か自覚しているのか。日本との戦いを見る限り、サウジアラビアもオーストラリアも決してそれほど強くない。苦戦の理由は、選手というより監督采配。もう少し優れた監督が日本代表の指揮を取っていれば、これほど苦戦していないとは率直な感想になる。

 日本も強くなければ、同じアジアのライバルたちも強くない。超ハイレベルな欧州予選を見るたびに、日本人として僕は少々肩身が狭くなる。日本代表よりもW杯本大会で見てみたいチームは、それこそ世界にはたくさんある。欧州の中堅国はその代表。スウェーデン、ポーランド、ロシアなどは、日本よりも確実に強い。日本が欧州予選に参加していれば、予選突破はおろか、プレーオフに進出できたかも怪しい限りだ。

 極論を言えば、イタリアとポルトガルがW杯本大会で見られるのであれば、僕は日本が予選落ちしても構わないと思っている。W杯予選敗退からEUROで優勝したイタリアのように、予選敗退を機に日本サッカーが生まれ変わるのであれば、長い目で見れば問題ない。良薬は口に苦しと言うが、それくらいの劇薬がなければ、おそらく日本のサッカー界は進歩しない。僕はそう思う。

 日本だけを見ていても、日本のことはわからない。世界のサッカー情勢から目を離すな、である。

 

 


 

 

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?