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事業ドメインの考え方

ビジネスを始めるとき、事業ドメイン(事業の定義)を決めますか?

事業ドメインとは簡単に言うと「その事業で何を行うか」を決めることです。
(例えばバス会社なら「バスによる輸送サービス」のような、どのような商品やサービスを提供するのかといった具合。)

これが明確に定められていないと、企業としての意思決定が成り行きに左右されるし、企業の伝えたい事がぼやけてしまったり、組織としての機能が損なわれる危険もあります。

事業活動の範囲を設定して、必要な経営資源を投資するため、しっかりと事業ドメインを設定する必要があるのです。


事業ドメインを決める3つの軸

事業ドメインを決めるときは、一般には「顧客(Customer)」「機能(Function)」「技術(Technology)」の3つの要素を軸に考えます。


顧客軸(Customer)

自社の商品(製品)やサービスを「誰に」対して提供して、価値を与えるか考えます。

顧客について考えるには、顧客が住んでいる場所や年齢、性別、趣味、嗜好、家族構成などの属性を分析する、市場の細分化(セグメンテーション)し、最も効果が発揮できるであろうターゲットを設定します。

例えば自動車のミニバンは、顧客は家族、単身者、主婦などが考えられますが、この内どの部分を対象とするかセグメントを選択し、自社事業のドメインとします。


技術軸(Technology)

競合にはない自社独自の技術を特定します。意味としてはコア・コンピタンスに近いニュアンスです。

例えば富士フィルムでは、自社が持つ高い技術力を活かして化粧品・サプリメント市場での新規事業を成功させることができました。

コア・コンピタンスとは企業活動における「コア」、すなわち中枢・中核となる強みの事です。

事業の定義は、このような技術の中で選択されます。


機能軸(Function)

顧客に対してどのような価値を提供していくのかについて考えます。機能軸を突き詰めることは、顧客のニーズを理解する事であり、マーケティングの基本中の基本です。

例えば、炊飯ジャーと言う製品の場合、提供している機能は「炊飯」と「保温」の2つ。企業としては、このような顧客の欲しているニーズをいかに自社の事業領域として定義するかという事です。

高品質であればある程、優良顧客の獲得にも繋がりますので、大企業が競争優位性を保つ上で重視とされています。


マーケティング近視眼に注意すべし

マーケティング近視眼とは、事業の定義を「狭く」しすぎる事です。
ハーバード大学のセオドア・レヴィット教授が「マーケティング近視眼」の例としてアメリカの鉄道会社を挙げました。

20世紀初頭、隆盛を誇ったアメリカの鉄道会社は20世紀の中頃になると見る影もなく衰退してしまいましたが、これは鉄道会社が利用者の目的と手段を取り違えて理解したことに端を発します。


アメリカ鉄道会社が衰退した理由とは

アメリカの鉄道会社は、自らの事業を「鉄道事業」と考え、多くの乗客を安価なコストで列車に乗せ、都市と都市をつなぎ大陸を横断しました。しかし、それに対抗する飛行機や自動車が新しい移動手段として登場してからほどなく、鉄道は人々の前から姿を消すことになります。

もし、鉄道会社が自らを「輸送産業」と考えていれば、鉄道ビジネスだけに固執せず別のサービスを提供でき、鉄道会社にはまだまだ成長のチャンスはありました。

このことからも事業の定義にあたっては消費者が本当に求めているものは何かを熟考することが必須となります。


マーケティング遠視眼にも気をつけて

例えば、とある企業は自社の事業を「製品」ではなく「顧客の視点」によって再編成しました。
火力発電力 → エネルギー事業 といった具合です。

しかしエネルギー事業と定義してしまうと、火力だけでなく、風力、水力、原子力もあるため、そちらへの投資も拡大していく事なります。
結果、全社的な資金面での余裕は乏しくなりました

このように事業の定義を広くしすぎるのも考えものなのです。

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